金銭債権を有する者が、その債権を保全するため債務者の第三者に対して有する権利を代位行使できるのは、債務者の資力がその債務を弁済するについて十分でない場合にかぎられると解するのが相当である(昭和三九年(オ)第七四〇号同四〇年一〇月一二日第三小法廷判決参照)。
債権者代位と債務者の資力
民法423条
判旨
金銭債権を保全するために債権者代位権を行使するには、債務者が無資力であることが必要である。
問題の所在(論点)
金銭債権を保全するために債権者代位権(民法423条)を行使する場合、債務者の無資力(債務者の資力が弁済に不十分であること)が必要か。
規範
金銭債権を有する者が、その債権を保全するため債務者の第三者に対して有する権利を代位行使できるのは、債務者の資力がその債務を弁済するについて十分でない場合に限られる(債務者の無資力要件)。
重要事実
上告人(債権者)は、債務者に対して金銭債権を有していた。上告人は、当該金銭債権を保全するために、債務者が第三者に対して有する権利を代位行使しようとしたが、原審において債権者代位の要件を欠くと判断された。上告人は、特定債権の保全に関する大審院判例等を引用して無資力要件を否定する主張をしたが、最高裁での判断を仰ぐこととなった。
事件番号: 昭和39(オ)1107 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
昭和三九年(オ)第七七号同四一年一一月一八日第二小法廷判決(民集二〇巻九号一八二七頁掲載)と同旨。
あてはめ
金銭債権の行使は債務者の責任財産を確保することを目的とするものである。したがって、債務者に十分な資力があり、債権者が自らの債権を満足させることが可能であるならば、債務者の財産管理権に対する不当な介入を避けるべきである。本件において、上告人は金銭債権の保全を目的としているところ、原審が認定した事実に照らせば、債務者の資力が弁済に不十分であるという状態にはない。そのため、債権者代位権を行使するための要件としての無資力を欠いていると解される。
結論
金銭債権の保全を目的とする債権者代位権の行使には債務者の無資力が必要であり、本件請求は認められない。
実務上の射程
金銭債権に基づく代位において無資力要件を確立したリーディングケース。登記請求権等の特定債権の保全(転用事例)においては無資力要件が不要となる場合があることとの対比で重要となる。答案上は、まず被保全債権の性質(金銭債権か特定債権か)を特定し、金銭債権であれば本判例を根拠に無資力要件を指摘する流れとなる。
事件番号: 昭和39(オ)1368 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。
事件番号: 昭和29(オ)909 / 裁判年月日: 昭和31年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が登記申請の事実や抵当権設定通知を認識しておらず、かつ妻らが債務の支払を本人に秘匿して行っていた場合には、無権代理行為に対する本人の追認があったとは認められない。 第1 事案の概要:被上告人の所有権移転登記につき権利証が添付され、抵当権設定登記に関する通知が法務局からなされた事実があった。しか…
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。