原判決の右認定は、その挙示する証拠関係、事実関係から肯認し得るところであるから、原審は、被上告人社会の右自白が事実に反し、かつ、被上告人会社の錯誤に基づいてなされたものと推定の上、右自白の撤回を許容して右認定をなしたものと解することができる。
自白の撤回を許容したものと解されるとした事例
民訴法257条
判旨
裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいてなされたことが証明された場合に限り許容されるが、自白が真実に反することの証明があれば、錯誤によることは推定される。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回が認められるための要件、特に「錯誤」の要件に関する証明の要否が問題となる。
規範
裁判上の自白が成立した場合、当事者は原則としてこれを撤回できない。ただし、(1)自白が真実に反すること、および(2)錯誤に基づいたことの双方が証明された場合には、例外的に撤回が許容される。もっとも、自白が真実に反することの証明があるときは、特段の事情がない限り、錯誤によるものであることが事実上推定されると解するのが相当である。
重要事実
被上告人(買主)は当初、本件売買債務の内容が限定種類債務である旨を主張していたが、その後の口頭弁論期日において、当該債務は限定のない種類債務であると主張を一転させた。上告人(売主)は、当初の主張が裁判上の自白にあたるとして撤回を争ったが、原審は種類債務である旨の認定を行い、自白の撤回を認める判断を示した。
あてはめ
本件において、原審が本件債務を種類債務であると認定したことは、従前の「限定種類債務である」との自白が真実に反することを確認したものといえる。このように自白の内容が真実に反することの証明がなされた以上、当該自白は錯誤に基づいてなされたものと推定される。したがって、原審が被上告人の自白の撤回を許容し、種類債務であると認定したプロセスに違法はない。
結論
自白が真実に反することの証明があるときは、錯誤によるものであると推定して自白の撤回を認めてよい。本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟法上の「裁判上の自白」の撤回要件に関するリーディングケースである。答案作成上は、撤回を認めるための二要件(反真実・錯誤)を提示した上で、反真実の証明から錯誤を推定するという論理構成を用いることで、撤回の可否を簡潔に論証できる。
事件番号: 昭和33(オ)732 / 裁判年月日: 昭和36年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、相手方の同意がない場合であっても、相手方がこれに対して異議を述べた形跡が認められないときは、有効に成立する。 第1 事案の概要:土地売買契約の成立をめぐる紛争において、第一審の被告(被上告人)が答弁書や準備書面を通じて契約の成立を否認する主張を行った。これに対し、原告(上告人…