判旨
裁判上の自白が成立した場合、その撤回が認められるためには、自白が真実に反し、かつ、それが錯誤に基づいたものであることを要する。裁判所がこれらの要件を充たさないと合理的に判断した場合には、自白の撤回は認められない。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回が認められるための要件、およびその要件の存否に関する裁判所の事実認定・証拠取捨の裁量の範囲が問題となった。
規範
裁判上の自白(民事訴訟法上の効力)について、一度成立した自白を撤回するには、(1)自白が真実に反すること、および(2)自白が錯誤に基づいたものであること、の双方を証明しなければならない。
重要事実
上告人は原審において一定の事実を認める供述(自白)をしたが、後にその自白は真実に反し、かつ錯誤によってなされたものであると主張して撤回を試みた。原審は、上告人の供述(記録上の証拠)を排斥し、他に自白が真実に反することを認めるに足る証拠がないとして撤回を認めなかった。
あてはめ
最高裁は、原審が上告人の主張(自白が真実に反し錯誤に出たという主張)に対し、特定の供述を排斥し、他に真実に反することを裏付ける証拠がないと判断したプロセスを是認した。これは原審の裁量に属する証拠の取捨判断として適法であると評価される。
結論
自白が真実に反し錯誤に基づいたものであるとの立証が不十分である以上、自白の撤回は認められず、原判決の事実認定に違法はないとして、上告を棄却した。
実務上の射程
自白の撤回要件(真実に反すること+錯誤)という伝統的な判例法理を確認するものである。答案上は、相手方の主張した自己に不利益な事実を認めた事実(自白)の拘束力を論じる際に、撤回の可否の基準として引用する。また、反証が不十分な場合の裁判所の自由心証(証拠取捨)の合理性を示す際にも参照しうる。
事件番号: 昭和33(オ)732 / 裁判年月日: 昭和36年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、相手方の同意がない場合であっても、相手方がこれに対して異議を述べた形跡が認められないときは、有効に成立する。 第1 事案の概要:土地売買契約の成立をめぐる紛争において、第一審の被告(被上告人)が答弁書や準備書面を通じて契約の成立を否認する主張を行った。これに対し、原告(上告人…