判旨
裁判上の自白の撤回は、相手方の同意がない場合であっても、相手方がこれに対して異議を述べた形跡が認められないときは、有効に成立する。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回において、相手方の明示的な同意がない場合に、相手方が異議を述べなかったことをもって撤回を有効と認めることができるか。
規範
裁判上の自白の撤回は、原則として許されないが、相手方の同意がある場合には例外的に認められる。そして、相手方の明示的な同意がない場合であっても、相手方が自白の撤回に対して異議を述べた形跡が認められないときは、黙示の同意があったものと解され、当該撤回は有効となる。
重要事実
土地売買契約の成立をめぐる紛争において、第一審の被告(被上告人)が答弁書や準備書面を通じて契約の成立を否認する主張を行った。これに対し、原告(上告人)は、被告が一度自白した内容を後に撤回したものであると主張し、その撤回の有効性を争った。しかし、記録上、原告が被告による当該自白の撤回(または否認への転換)に対して、適時に異議を述べた形跡は存在しなかった。
あてはめ
本件において、仮に被告の主張が自白の撤回に該当するとしても、上告人(原告)が当該撤回に対して異議を述べた形跡は認められない。自白の撤回に対して相手方が異議を述べない以上、実質的に撤回に同意したものと同視できるため、撤回の効力を否定すべき特段の事情はない。したがって、当該撤回は有効に成立しており、原判決に自白の拘束力に関する法令違背等の過誤はないといえる。
結論
自白の撤回に対し、相手方が異議を述べた形跡がない場合には、当該撤回は有効である。
実務上の射程
自白の撤回が認められる例外的事由(反真実かつ錯誤など)が証明できない場合でも、相手方の無異議(黙示の同意)を根拠に撤回の有効性を主張する際の指針となる。実務上は、相手方の反論の有無を記録から精査し、適時提出主義や信義則の観点も踏まえた主張立証に活用すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)778 / 裁判年月日: 昭和40年9月7日 / 結論: 棄却
原判決の右認定は、その挙示する証拠関係、事実関係から肯認し得るところであるから、原審は、被上告人社会の右自白が事実に反し、かつ、被上告人会社の錯誤に基づいてなされたものと推定の上、右自白の撤回を許容して右認定をなしたものと解することができる。