自白を撤回したことが明らかであるにもかかわらず、弁論終結に至るまで異議を述べた形迹がなんら存しない場合には、右自白の撤回を暗黙裡に同意したものとすべきである。
自白の撤回につき暗黙の同意があつたものとされた事例。
民訴法257条
判旨
裁判上の自白の撤回は、相手方がこれに同意した場合には認められ、その同意は明示的なものに限らず、相手方が撤回に対して異議を述べないなどの状況から暗黙の同意があったと認めることができる。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回において、相手方の「同意」は黙示的な形でも認められるか。また、撤回に対して異議を述べずに訴訟を継続した事実は、暗黙の同意にあたるか。
規範
裁判上の自白が成立した場合、原則として撤回は許されないが、例外として(1)相手方の同意がある場合、(2)自白が真実に反し、かつ錯誤に基づきなされたことの証明がある場合、(3)自白の内容が刑事上罰すべき他人の行為によって誘発された場合には撤回が認められる。このうち相手方の同意については、明示的な意思表示のみならず、撤回の事実を知りながら異議を述べないなどの態度により、暗黙に同意があったと評価することも可能である。
重要事実
第一審の第1回口頭弁論において、被上告人(原告)は、自動車2台に本件20万円の債権の担保として抵当権が設定されていた旨の上告人(被告)の主張事実を認める自白をした。しかし、第7回口頭弁論において、被上告人は当該事実を否認する旨の準備書面に基づき陳述し、自白を撤回した。上告人は、この撤回に対して原審の口頭弁論終結に至るまで何ら異議を述べることなく訴訟を追行した。
あてはめ
本件では、被上告人が第7回口頭弁論において自白を撤回する旨の陳述を行ったのに対し、上告人はその後原審の口頭弁論終結に至るまで長期間にわたり何ら異議を述べた形跡がない。自白の撤回という重大な訴訟行為に対して何ら反論せず訴訟を継続したことは、被上告人による撤回を容認したものと評価できる。したがって、上告人は自白の撤回を暗黙裡に同意していたものと解するのが相当である。
結論
自白の撤回に対する暗黙の同意が認められるため、当該撤回は有効であり、原審が自白に拘束されずに事実認定を行ったことに違法はない。上告棄却。
実務上の射程
自白の撤回の要件である「相手方の同意」の認定手法を示した射程の広い判例である。答案上は、相手方が撤回に反論せず新主張について争っている場合に、信義則や訴訟状態を考慮して「暗黙の同意」を基礎付ける事実として活用すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)778 / 裁判年月日: 昭和40年9月7日 / 結論: 棄却
原判決の右認定は、その挙示する証拠関係、事実関係から肯認し得るところであるから、原審は、被上告人社会の右自白が事実に反し、かつ、被上告人会社の錯誤に基づいてなされたものと推定の上、右自白の撤回を許容して右認定をなしたものと解することができる。
事件番号: 昭和35(オ)523 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
上告判決が破棄の理由とした判断外の点については、差戻後の控訴審は差戻前と異なる事実認定をしても違法でない。