株主が株金払込のために他より借り受けた借入金債務につき会社自体が弁済の責に任ずることは、異例に属するから、これに伴う求償関係について何ら審理を尽さず、漫然右事実を認定した点に理由不備の違法がある。
審理不尽理由不備があるとされた事例。
民訴法395条1項6号
判旨
株主が株金払込のために他から借り受けた債務を会社が引き受けることは、代償を得るか求償し得ることが明らかでない限り、出資の払い戻しと同様の不当な結果を招くため、原則として認められない。また、不当な所有権移転登記を主張する者が、その後の担保設定を黙認しているなどの不自然な事実がある場合には、特段の説明がない限り、合意の存在を認めることはできない。
問題の所在(論点)
株主個人の株金払込債務を会社が引き受けることの可否、および不自然な事実関係が存在する場合の合意認定の妥当性(会社法上の資本原則および事実認定の合理性)。
規範
株主が株金払込のために要した個人的な借入金債務につき、会社がこれを免責的または重畳的に引き受けることは、特段の事情がない限り、会社財産の維持の観点から許容されない。会社が債務を引き受けるためには、会社が株主から代償(対価)を得ているか、あるいは株主に対して求償し得ることが明らかでなければならない。これらを欠く債務引受けは、実質的に出資の総額を株主へ払い戻すのと同様の結果を招き、資本充実の原則に反するためである。
重要事実
上告会社(被告)の設立に際し、被上告人(原告・常務取締役)は公庫から100万円を借り入れて株金を払い込んだ。原審は、上告会社がこの債務を引き受け、さらに被上告人が担保提供した本件土地につき、会社代表者Dが被上告人に無断で会社名義へ登記したが、債務弁済時には被上告人名義に戻す合意(本件合意)がなされたと認定した。しかし、上告会社はその後本件土地に極度額300万円の根抵当権を設定しており、被上告人はこれを知り得る立場にありながら異議を述べていなかった。また、代表者交代時の取決めでも本件合意への言及がなかった。
あてはめ
本件では、被上告人が負う100万円の債務(資本金と同額)を、設立間もない会社が代償もなく引き受けることは、実質的な出資の払戻しに該当し極めて不当である。また、所有権登記が不当であると主張しながら、その後の多額の根抵当権設定を黙認していた事実は、本件合意の存在に対する有力な反証となる。さらに、代表者交代時という重要な節目で本件合意が触れられていないことも不自然である。原審は、これらの資本充実の観点や反証となる事実に対する特段の説明を欠いたまま、安易に合意を認めており、理由不備・審理不尽の違法がある。
結論
株主の借入金債務を会社が引き受けることは、代償や求償権の確保がない限り認められない。また、有力な反証を排斥する特段の説明がないままなされた事実認定は違法であり、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
会社による株主の個人的債務の引受けが、実質的な「出資の払戻し」にあたり、資本充実の原則(現行法下の剰余金分配規制等)の趣旨に反することを論じる際の根拠となる。また、事実認定において、当事者の属性(役員等)から知り得たはずの事実や、取引上の不自然な挙動が「反証」として重視されるべきことを示す。答案上は、利益供与や不当な財産流出を否定する文脈で、対価性や求償の有無を検討する指針として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1368 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。
事件番号: 昭和29(オ)431 / 裁判年月日: 昭和31年4月3日 / 結論: 棄却
不動産が譲渡担保に供せられたが、被担保債権はいまだ消滅していないという理由で、原告の所有権移転登記の請求を排斥した判決に対し、右不動産は単純に買い受けたもので譲渡担保に供されたものでないと主張してなされた被告からの上告は利益を欠くものである。
事件番号: 昭和27(オ)639 / 裁判年月日: 昭和29年10月8日 / 結論: 棄却
村農地委員会が、はじめ売渡の相手方を甲と定めた農地売渡計画を樹立し、公告縦覧の手続を践み、県農地委員会の承認を受けた後、売渡の相手方を乙に変更する旨の議決をなしてその旨甲および乙に通知し、次いで知事から乙に対し売渡通知書を交付した場合においては、乙に対する農地の売渡処分は当然無効と認むべきである。