学校法人の寄附行為に「理事長以外の理事は、すべてこの法人の業務について、この法人を代表しない」と記載されており(私立学校法第三七条参照)、理事長が死亡し後継理事長の指名のない場合における準則となるべき特段の規定が寄附行為に存しない場合においては、理事長が死亡しても、単なる理事が法人の代表権を回復するにいたると解すべきものではない(同条一項参照)。
学校法人の単なる理事が法人の代表権を有しないとされた事例
私立学校法37条1項
判旨
理事の代表権を理事長に限定する寄附行為の定めがある場合、理事長が死亡し後継者の指名がない状況であっても、当然に他の理事が代表権を回復するわけではない。
問題の所在(論点)
寄附行為によって理事が法人を代表しない旨の制限が付され、その旨の登記がなされている場合において、理事長が死亡し、かつ指名された職務代理者がいないときに、平理事が当然に法人代表権を回復するか。
規範
私立学校法37条1項により理事の代表権を寄附行為で制限し、かつその旨を登記した場合には、当該制限は第三者に対抗できる。この制限がある以上、理事長が欠け、かつ寄附行為上の職務代理規定による指名がない場合であっても、当然に他の理事が代表権を回復して法人を代表することは認められない。
重要事実
学校法人B大学の寄附行為には、理事長以外の理事は代表権を有しない旨が定められ、その旨の登記もなされていた。また、理事長が欠けた際は理事長が指名した理事が職務を代理する旨の規定もあった。理事長Dが後継者を指名せずに死亡したため理事長が欠ける事態となったが、理事Eは当然に自らが代表権を有すると主張して法人を代表する行為に及んだ。
事件番号: 昭和33(オ)600 / 裁判年月日: 昭和34年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。 第1 事案の概要:財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定が…
あてはめ
被上告法人の寄附行為10条は理事長のみに代表権を限定し、理事の代表権を制限している。11条には職務代理規定があるが、Dは指名を行わずに死亡しており、他に準則となる規定も存しない。私立学校法および寄附行為の趣旨に照らせば、代表権を制限された単なる理事が、代表者の不在という事態のみをもって当然に包括的な代表権を回復すると解することは、法人の組織規範および登記による公示の趣旨に反する。
結論
理事Eには法人の代表権が存しない。したがって、Eによる代表行為は無効であり、原審の判断は正当である。
実務上の射程
代表権制限の登記がある場合の対抗力を重視する判断である。実務上、代表者が欠けた場合は、代表権の当然の回復を主張するのではなく、民法等の準用による仮理事(一時理事)の選任申立て等の法的手段を検討すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和28(オ)228 / 裁判年月日: 昭和29年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利能力なき社団の代表者が、当該団体の代表権のみならず管理権を有すると認められる場合には、その管理権に基づき、団体の目的のために訴訟を提起することができる。 第1 事案の概要:被上告人は「本件講会」と称する団体の会長であった。被上告人が当該団体の会長として一切の代表権を有することについては当事者間…
事件番号: 平成17(受)614 / 裁判年月日: 平成18年7月10日 / 結論: 棄却
1 社会福祉法人が理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り,かつ,定款の定めによれば,在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができない場合において,仮理事の選任を待つことができないような急迫の事情があり,かつ,退任した理事と当該法人との間の信頼関係が維持され…
事件番号: 昭和45(オ)552 / 裁判年月日: 昭和46年10月26日 / 結論: 棄却
私立学校法による学校法人の代表権を有する理事の職務執行停止・代行者選任の仮処分によつて選任された理事の職務代行者と学校法人との利益相反する事項については、私立学校法四九条、民法五七条が準用される。