1 社会福祉法人が理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り,かつ,定款の定めによれば,在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができない場合において,仮理事の選任を待つことができないような急迫の事情があり,かつ,退任した理事と当該法人との間の信頼関係が維持されていて,退任した理事に後任理事の選任をゆだねても選任の適正が損なわれるおそれがないときには,民法654条の趣旨に照らし,退任した理事は,後任理事の選任をすることができる。 2 社会福祉法人が,理事定数を10名から6名に変更する旨の定款変更決議をし,所轄庁の認可を受けないうちに定款変更の効力が生じるとの誤解により,4名の理事について後任理事を選任しなかったので,その任期の満了による退任により,理事会の開催及び後任理事の選任に必要な理事の員数を欠くに至った場合において,(1)理事らが上記誤解に気が付いた時点では,当該年度の収支補正予算案や次年度の収支予算案等の重要議案を審議することが予定されていた理事会の開催を3日後に控えており,仮理事選任手続を了するまで理事会において当該法人の意思決定ができない状態が続くとすれば,当該法人に著しい不利益が生じるおそれが顕著であったこと,(2)任期満了により退任した4名の理事は,退任後も評議員として活動していたことなど判示の事実関係の下では,退任した理事は,上記理事会開催の時点において,定款で後任理事の選任に必要とされている同意をすることができる。
1 社会福祉法人において退任した理事が後任理事の選任をすることができる場合 2 社会福祉法人において退任した理事が定款で後任理事の選任に必要とされている同意をすることができるとされた事例
(1,2につき)社会福祉法36条1項,2項,社会福祉法45条,民法56条,民法654条
判旨
社会福祉法人の理事に欠員が生じ、定款上の選任要件を満たせない場合であっても、仮理事の選任を待てない急迫の事情があり、かつ退任理事との信頼関係が維持されているときは、民法654条の趣旨に照らし、退任理事が後任理事を選任することができる。
問題の所在(論点)
社会福祉法において、理事の欠員により定款所定の選任要件(定足数等)を充足できなくなった場合、退任理事が後任理事を選任できるか(民法654条の適用の可否)。
規範
社会福祉法人は、理事の欠員により定款所定の員数を欠き、かつ在任理事のみでは後任を選任できない場合、原則として民法56条(仮理事の選任)により対応すべきである。しかし、社会福祉法人と理事の関係は委任関係(民法643条以下)である。したがって、①仮理事の選任を待つことができない急迫の事情があり、かつ、②退任理事と法人との信頼関係が維持され、選任の適正が損なわれるおそれがない場合には、民法654条(委任終了後の処分)の趣旨に照らし、退任理事が後任理事の選任行為を行うことが認められる。
事件番号: 平成29(受)84 / 裁判年月日: 平成29年12月18日 / 結論: 破棄差戻
理事長を建物の区分所有等に関する法律に定める管理者とし,役員である理事に理事長を含むものとした上,役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならないとする一方で,理事を組合員のうちから総会で選任し,理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合においては,理事の互選により選任された理…
重要事実
社会福祉法人Xの理事らは、定款変更(定数削減)が未認可で無効であることに気づかず、理事Fら4名が辞任・退任した結果、残存理事が6名(定数10名の3分の2未満)となった。このため、定款上、後任選任に必要な同意が得られず、理事会も開催できない状態に陥った。一方で、Xは都からの指導により、予算案等の重要議案を3日後の理事会で審議せねばならず、決定が遅れれば施設利用者等に著しい支障が生じる状況にあった。その後、理事会とみなされた評議員会において、Fら4名を含む10名を理事とする運営に誰も異議を唱えず、理事長も黙示に委嘱していた。
あてはめ
①について、都からの指導により重要議案の速やかな意思決定が求められており、仮理事選任を待つ時間的猶予がない顕著な不利益が生じる状況であったことから、急迫の事情が認められる。②について、Fら4名は退任後も評議員として活動しており、法人との信頼関係は維持されていたといえる。よって、Fら4名は民法654条の趣旨により後任理事の選任に関与できる。本件では、理事会とみなされた会議において、当時の全理事10名のうち7名以上の黙示の同意と理事長の黙示の委嘱があったといえるため、Fら4名は再び理事に選任されたと解される。
結論
Fら4名の再任は有効であり、第200回理事会当時の理事は10名である。その過半数の票を得たBが適法に理事長に選任されたといえるため、上告人が理事長であるとの確認請求は認められない。
実務上の射程
会社法346条1項のような権利義務承継規定を欠く一般法人や社会福祉法人において、デッドロック状態を解消するための緊急避難的な事後的救済法理として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)600 / 裁判年月日: 昭和34年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。 第1 事案の概要:財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定が…
事件番号: 昭和50(オ)1227 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 棄却
任期満了により退任した理事は後任者が就任するまで理事の職務を行う旨の寄附行為の規定は、理事全員が退任した場合だけでなく、理事の一人が退任しその後任者が選任されないため寄附行為所定の理事の定員が欠けた場合についても、適用される。
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…