任期満了により退任した理事は後任者が就任するまで理事の職務を行う旨の寄附行為の規定は、理事全員が退任した場合だけでなく、理事の一人が退任しその後任者が選任されないため寄附行為所定の理事の定員が欠けた場合についても、適用される。
任期満了により退任した理事は後任者が就任するまで理事の職務を行う旨の寄附行為の規定の趣旨
民法37条,民法39条,民法52条
判旨
理事の任期満了後も後任者が就任するまで職務を継続する旨の寄附行為の規定は、理事の一部が退任して定員を欠くに至った場合にも適用される。したがって、他の理事が死亡し、かつ後任者が選任されていない状況下では、任期満了した理事が単独で理事の職務を行う権限を有する。
問題の所在(論点)
理事が任期満了し、かつ他の理事が死亡等により不在となった場合において、寄附行為上の「後任者就任までの職務継続規定」に基づき、当該理事が単独で職務を行う権限を有するか。特に、理事の一部が欠けたに過ぎない場合にも同規定が適用されるかが問題となる。
規範
法人の寄附行為において「役員は任期満了するも後任者就任するまでその職務を行うものとする」旨の規定がある場合、当該規定は、理事全員が退任した場合のみならず、一部の理事が退任し後任者が選任されないために定員が欠けた場合にも適用される。この場合、任期満了した理事は、後任者が選任されるまでの間、引き続き理事としての職務を行う権限を保持する。
重要事実
財団法人Aの理事4名のうち、理事Dは任期満了を迎えたが、後任者は選任されていなかった。一方、D以外の理事3名は、昭和37年3月10日までに全員が死亡したが、これらについても後任者の選任は行われていなかった。Aの原始寄附行為15条3項には、役員は任期満了後も後任者が就任するまでその職務を行う旨の規定が存在していた。このような状況下で、Dが一人で理事の職務を行う権限を有するか否かが争点となった。
事件番号: 昭和39(オ)241 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
後任理事の選任があるまでは退任理事になお従前の権限を行わせる旨寄附行為に規定されている場合の右権限の存続期間は、後任理事の選任手続に要する相当期間に限られると解すべきではない。
あてはめ
本件寄附行為には役員の任期満了後の職務継続規定が存在する。理事Dについては、任期満了時に後任者が選任されていなかったため、右規定により引き続き理事の職務を行うことが可能である。また、他の理事3名が死亡し、その後任者も選任されていない以上、Dは定員を欠く状態を解消し法人の業務を継続させるため、右規定の趣旨に従って、死亡した他の理事の職務を含め、一人で理事の職務を行う権限を有するに至ったと解される。
結論
理事Dは、昭和37年3月10日当時、一人で財団法人Aの理事の職務を行う権限を有していたものというべきである。
実務上の射程
法人の理事に欠員が生じた場合、本来は裁判所による仮理事の選任(一般法人法79条等)を検討すべきだが、寄附行為や定款に本件と同様の規定がある場合には、任期満了した理事が当然に職務権限を保持し続けることを肯定した点に実務上の意義がある。特に、理事が一人になったとしても、定員欠損状態における業務停滞を防ぐための緊急措置として、その権限行使を有効と認める論拠となる。
事件番号: 昭和36(オ)674 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
弁護士たる資格を喪失した後の訴訟代理人が訴訟に関与した訴訟手続のかしは、本件のごとき場合、原判決になんらの影響も及ぼさない。
事件番号: 平成17(受)614 / 裁判年月日: 平成18年7月10日 / 結論: 棄却
1 社会福祉法人が理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り,かつ,定款の定めによれば,在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができない場合において,仮理事の選任を待つことができないような急迫の事情があり,かつ,退任した理事と当該法人との間の信頼関係が維持され…