一 税関吏が税関押収の船舶の噴油弁を取り外させて保管中、台風が近づいたのに右噴油弁の返還処置を怠つたため、右船舶が台風のため押し流されて他の船舶の火災から類焼を受けた等原判示(原判決および一審判決理由参照)の事情のもとにおいては、右税関吏の過失と押収船舶の類焼との間に相当因果関係があるものと解するべきである。 二 前項の類焼時から差押が解除されるまでに約二年の期間が経過し、還付後の改修費が被害を受けた当時の見積額より増加したとしても、それが自然騰貴によるものである以上、その増加分も損害額に含めて賠償を命ずることが相当である。
一 税関吏の過失と押収船舶の類焼による損害との間に相当因果関係が認められた事例 二 前項の損害の算定につき類焼後差押解除時までの間に騰貴した改修費用も含まれるとされた事例
民法709条,民法416条
判旨
不法行為による被害車両の改修費用が、差押等のやむを得ない事情により遅延した間に価格の自然騰貴が生じた場合、その騰貴分も相当因果関係の範囲内の損害として認められる。
問題の所在(論点)
不法行為による損害賠償額を算定する際、被害者が目的物を処分・修繕できない拘束状態にある間に生じた物価の自然騰貴分を、相当因果関係のある損害として請求できるか(民法709条、416条の類推適用)。
規範
不法行為に基づく損害賠償の範囲については、原則として不法行為時の価格を基準とするが、債権者が目的物を自由に使用・処分できない特別の事情がある期間中に価格が自然騰貴した場合、その騰貴後の価格による損害も相当因果関係の範囲内に含まれると解すべきである。
重要事実
大蔵事務官の過失により、被上告人所有の船舶「E丸」が類焼被害を受けた。当時、当該船舶は国によって差押中であり、被上告人が自由に改修できる状態になかった。その後、還付された時点で改修を行ったが、物価の自然騰貴により、改修費用が不法行為当時の見積額よりも増加していた。
あてはめ
本件において、船舶は類焼当時から差押下にあり、被上告人が自由に改修に着手できたのは早くとも還付以後である。還付までの期間、被上告人には改修を遅延させた責任はなく、還付後に判明した改修費の増加は物価の自然騰貴によるものである。したがって、この増加分は不法行為と相当因果関係を有する損害として上告人が負担すべきである。
結論
被上告人は、自然騰貴分を含む増加後の改修費用全額について損害賠償を請求することができる。
実務上の射程
損害賠償額の算定時期に関する例外を示す判例である。差押や押収など、被害者の責めに帰すべからざる事由により修繕や代品購入が不可能な期間がある場合、不法行為時ではなく、その後の価格騰貴を考慮できるとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)87 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の債務不履行により解除となった際、債務整理の必要上、物件を不利な条件で早急に転売せざるを得なかったという特別事情がある場合、当該転売価格と当初の売買価格との差額を損害として賠償請求でき、その算定に際して物件の時価を確定する必要はない。 第1 事案の概要:買主(上告人)の代金支払債務不履行に…