通常の家屋賃貸借を当事者の合意で一時使用の賃貸借に変更するは法律上可能である。
通常の家屋賃貸借を当事者の合意で一時使用の賃貸借に変更することができるか。
民法601条,借家法8条
判旨
通常の建物賃貸借を当事者の自由な意思に基づき一時使用目的の賃貸借へ変更することは有効であり、その更新後の契約も特段の事情がない限り一時使用目的を維持し、借地借家法の適用を排除する。
問題の所在(論点)
当初は通常の建物賃貸借であった契約を、合意により一時使用目的の賃貸借に変更できるか。また、その契約が更新された場合に、一時使用目的の賃貸借としての性質(借家法の適用除外)が維持されるか。
規範
建物賃貸借契約において、当初は通常の賃貸借であったものを当事者の自由な意思に基づき一時使用目的の賃貸借へと変更することは、私的自治の原則に基づき許容される。また、一時使用目的の賃貸借が更新された場合、更新後の契約が期間の定めのないものであったとしても、特段の事情がない限り、更新前と同様に一時使用目的の賃貸借としての性質を維持する。この場合、借家法(現・借地借家法40条)の適用はなく、解約の申入れに正当事由は不要である。
重要事実
賃貸人(被上告人)と賃借人(上告人ら)は、当初通常の建物賃貸借契約を締結していたが、裁判上の和解において、当該契約を一時使用目的の賃貸借に変更した。その後、定められた存続期間が満了したが、賃借人は居住を継続し、賃貸人は賃料に相当する供託金を受領するなどしたため、契約は期間の定めのない契約として更新された。賃貸人は本件建物の明渡しを求めて提訴したが、賃借人側は借家法の適用を主張し、解約には正当事由が必要であると争った。
事件番号: 昭和38(オ)392 / 裁判年月日: 昭和39年8月20日 / 結論: 棄却
賃貸借終了後の損害金としての金員請求は、「賃貸借が原告主張の時点より後に終了したとすれば、その時までは賃料として請求する」との趣意を含むと解するのが一般であるが、本件における事情(当審判決理由参照)のもとにおいては、賃料請求としての趣意を含むものと解するのは相当でない。
あてはめ
本件における一時使用目的への変更は、裁判上の和解において当事者が自由な意思に基づいて行ったものであるから、法律上有効である。更新後の契約についても、和解による一時使用の合意を覆すような「特段の事情」は認められない。したがって、更新後の契約も一時使用目的の賃貸借であり、期間の定めがない形態であってもその性質は左右されない。借家法が適用されない以上、賃貸人による明渡請求(解約の申入れ)に際し、同法が要求する正当事由の存否を検討する必要はない。
結論
本件賃貸借は一時使用目的のものとして有効に存続しており、借家法の適用を受けないため、正当事由なくして終了する。賃貸人の明渡請求は認められる。
実務上の射程
借地借家法40条(一時使用目的の賃貸借)の成否が争われる事案において、中途で契約性質を切り替える合意の有効性を示す根拠となる。また、更新後も性質が継続するという判断は、合意の継続性を重視する実務指針となるが、現在の実務では「一時使用の客観的実態」が厳格に要求される点に留意が必要である。
事件番号: 昭和31(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解約申入れは要式行為ではなく、契約存続を欲しない意思が客観的に表示されていれば足り、更新拒絶の意思表示に解約申入れの意思が包含されていると解することも妨げられない。また、正当事由の判断において賃借人の困窮等の事情を考慮した上でなお明渡しを認めることが可能であり、正当事由が認められる場合…