原判決の認定した相当賃料が地代家賃統制令を超過する事実は、原審で主張立証がなく従つて認定を経ていない以上、上告審ではじめて主張することはできない。
地代家賃統制令超過の事実を上告審ではじめて主張することの適否。
民訴法394条
判旨
賃貸借契約が賃借権の無断譲渡を理由に解除された場合、転借人は、転貸借について賃理人の承諾を得ていたとしても、その転借権を賃理人に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
賃貸人が一部の転貸借を承諾していた場合において、賃借人の賃借権無断譲渡を理由に賃貸借契約が解除されたとき、転借人は賃貸人に対して転借権を対抗できるか。
規範
賃貸人と賃借人の間の賃貸借契約が、賃借権の無断譲渡(民法612条2項)に基づき適法に解除された場合、賃貸借契約は遡及的に消滅する。このとき、たとえ一部の転貸借について賃貸人の承諾があったとしても、転借人の占有権原は賃貸借契約の存在を前提とするものである以上、転借人は賃貸人に対してその転借権を対抗し得ない状態となる。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(D)との間で家屋の賃貸借契約を締結していた。賃借人Dは、家屋の一部を上告人に転貸し、これについて被上告人は承諾を与えていた。その後、Dは家屋全部について賃借権を無断で譲渡したため、被上告人はDとの賃貸借契約を無断譲渡を理由に解除した。上告人は、一部転貸の承諾を得ていることを理由に、被上告人に対し転借権を主張した。
あてはめ
本件では、上告人による一部転借について被上告人の承諾があった事実は認められる。しかし、賃借人Dが家屋全部の賃借権を無断譲渡した事実は、賃貸借契約の継続を困難にする重大な背信行為であり、これによる解除は適法である。賃貸借契約が解除によって終了した以上、その存在を前提とする転借権も消滅の運命を辿る。したがって、当初の転貸借について承諾があったとしても、基本となる賃貸借契約が消滅した以上、上告人は被上告人に対して転借権を対抗することはできないと解される。
結論
適法に解除された賃貸借契約に基づき、転借人は転借権を賃貸人に対抗できなくなる。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、合意解除ではなく債務不履行(無断譲渡)による解除の場合における転借人の地位を判示したものである。転貸人の承諾がある場合でも、基礎となる賃貸借契約が賃借人の帰責事由により解除されれば、転借権の対抗力は失われるという原則を確認する際に活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)638 / 裁判年月日: 昭和38年7月16日 / 結論: 棄却
無断転貸を理由に賃貸人が賃貸借契約を解除する意思表示をした当時、転貸による使用関係が終了していたからといつて、その一事により、右無断転貸を背信行為にあたらないと判断しなければならないものではない。