当事者が消滅時効を援用していない場合に、裁判所が右消滅時効を援用するか否かを確めなかつたからといつて、釈明権不行使の違法があるとはいえない。
釈明権不行使の違法がないとされた事例。
民訴法127条
判旨
裁判所は、当事者が主張していない消滅時効を援用するか否かを当事者に確認すべき釈明義務を負わず、また一旦終結した弁論を再開するか否かは裁判所の自由裁量に属する。
問題の所在(論点)
1. 当事者が主張していない消滅時効について、裁判所が確認すべき釈明義務を負うか。2. 弁論終結後の弁論再開申請を却下することは違法か。
規範
1. 裁判所は、当事者が消滅時効の主張援用をしていない場合に、その援用の有無を当事者に確認すべき釈明義務を負わない。2. 弁論の再開は裁判所の職権(自由裁量)に属し、当事者に再開を請求する権利は認められない。
重要事実
上告人(裏書人)は、被上告人(被裏書人)に対し約束手形を裏書譲渡した。被上告人が手形金等の支払を求めたのに対し、上告人は第一審および原審において「隠れた取立委任裏書」および「特約」の抗弁を主張したが、手形債務の消滅時効については一切主張援用しなかった。原審の弁論終結後、上告人は弁論再開を申請したが容れられず、判決が言い渡されたため、釈明権不行使および弁論非再開の不当を理由に上告した。
あてはめ
1. 上告人は一審から原審を通じて消滅時効を何ら主張援用していない。消滅時効の援用は当事者の意思に委ねられるべき事項であり、裁判所がこれをあえて確認しなかったとしても釈明権不行使の違法はない。2. 弁論再開は裁判所の裁量事項であり、審理経過に照らして再開申請を容れずに判決を言い渡した原審の判断は不当とはいえない。
結論
裁判所に消滅時効の援用を確認すべき義務はなく、弁論を再開しなかった判断も裁量の範囲内であり、適法である。
実務上の射程
民事訴訟法における弁論主義の適用範囲を画する。特に時効の援用のような形成権的抗弁について、裁判所が教示的な釈明を行う必要がないことを明示した点、および弁論再開の裁量権を認めた点で、実務上の基本原則を確認する事案である。
事件番号: 昭和34(オ)623 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一旦終結した弁論を再開するか否かは、当該裁判所の自由裁量に委ねられており、弁論再開申請を却下したとしても、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において弁論再開の申請を行った。しかし、原審は当該申請を採用(許可)することなく、弁論を再開しないまま判決を下した。これに対し、上告人…