裁判上の離婚の場合には、親権者指定の申立がなくても、離婚の判決をする裁判所が、職権をもって、父母の一方を親権者と指定することを要すると解すべきである。
離婚の訴における親権者指定申立の要否。
民法819条2項
判旨
裁判上の離婚において、子の親権者の指定は、当事者の申立てに拘束されず、裁判所が職権で父母の一方を指定すべき事項である。
問題の所在(論点)
裁判上の離婚(民法770条)に際し、子の親権者の指定(同法819条2項)について、裁判所は当事者の申立てに拘束されるか。すなわち、親権者の指定に処分権主義が適用されるか否かが問題となる。
規範
裁判上の離婚の場合、裁判所は、当事者の申立てに拘束されることなく、職権をもって父母の一方を親権者として指定しなければならない。
重要事実
被上告人(妻)が、上告人(夫)に対し、民法770条1項1号の不貞行為を理由として離婚を求めた事案。原審は離婚請求を認容した上で、子の親権者を指定したが、上告人は、親権者の指定について当事者の申立ての範囲に拘束されない裁判所の判断を不服として上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和36(オ)1337 / 裁判年月日: 昭和38年5月7日 / 結論: 棄却
夫が全く離婚の覚悟を固めてしまい、その後他の女と事実上の婚姻関係を結び同女との間に二子をもうけるに至つた等判示の事情のもとで、婚姻を継続し難い重大な事由があるとするのは正当である。
親権者の指定は、子の福祉という公益的観点から決定されるべき性質を有している。そのため、裁判上の離婚をする場合には、離婚の判決をする裁判所が、父母の主張や申立ての内容にかかわらず、独自の判断で子の利益に最も適う者を親権者として指定する必要がある。したがって、本件において原審が職権により親権者を指定したことは、当事者の申立てに拘束されるべきとする上告人の独自の見解に反するものではなく、適法である。
結論
親権者の指定は職権事項であり、裁判所は当事者の申立てに拘束されない。
実務上の射程
裁判上の離婚における親権者指定の職権性を明示した重要判例。人事訴訟における処分権主義の修正ないし排除の論拠として利用可能である。答案上は、子の監護に関する事項が公益的性格を有することを理由に、職権探知主義的運用が許容される文脈で引用する。
事件番号: 昭和28(オ)386 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】夫婦間の性格の相違や夫の過去の非行がそれ自体で直ちに離婚原因とはならないとしても、これらに加え諸般の事情を総合して判断し、婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる場合には、民法770条1項5号の離婚原因に該当する。 第1 事案の概要:被上告人(妻)が上告人(夫)に対し、性格の相違や上告人の過去…
事件番号: 昭和32(オ)463 / 裁判年月日: 昭和35年2月2日 / 結論: 棄却
婚姻事件においても、証拠調の限度は、裁判所が既に得た心証の程度により自由にこれを定めることができ、必ずしもつねに職権による当事者本人尋問の施行を要するものではない。
事件番号: 昭和36(オ)836 / 裁判年月日: 昭和38年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】婚姻を継続し難い重大な事由の発生について、相手方の責任が申立人の責任以上である場合には、信義則に反せず離婚が認められる。また、主たる破綻原因が相手方にある場合、一時的な同居・協力義務の不履行があっても悪意の遺棄には当たらない。 第1 事案の概要:夫(被上告人)が、嫁姑間及び夫婦間の融和に努力せず妻…