婚姻事件においても、証拠調の限度は、裁判所が既に得た心証の程度により自由にこれを定めることができ、必ずしもつねに職権による当事者本人尋問の施行を要するものではない。
婚姻事件と職権による当事者尋問の要否
民訴法259条,人事訴訟手続法12条
判旨
婚姻事件において裁判所がいかなる限度まで証拠調べをするかは、職権探知主義が適用される場合であっても、裁判所が既に得た心証の程度により自由に定めることができる。
問題の所在(論点)
人事訴訟において職権探知主義が採用されている場合、裁判所は当事者本人尋問を必ず実施しなければならないか。また、証拠調べの範囲に関する裁判所の裁量の有無が問題となる。
規範
婚姻事件等において職権探知主義(旧人事訴訟手続法10条、12条、現行人事訴訟法19条1項参照)が適用される場合であっても、裁判所が必ず当事者本人尋問等の特定の証拠調べを行わなければならないわけではない。証拠調べの範囲は、裁判所が既に得た心証の程度に基づき、その合理的な裁量によって自由に決定することができる。
重要事実
婚姻事件の上告審において、上告人は、原審が上告人本人尋問の手続を行わなかったことが訴訟手続の違背であり、憲法32条(裁判を受ける権利)等に違反すると主張した。なお、上告人は落盤事故により歩行能力を失っていたという事情があったが、原審は他の証拠によって事実認定を行い、本人尋問を実施せずに判決を下した。
事件番号: 昭和34(オ)193 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: 棄却
離婚の場合の慰藉料については、当事者の地位、年齢、財産関係その他諸般の事情を斟酌して決定すべきであるから、当事者の収入のほか扶養料の支払を命ずる審判がなされていることを斟酌したからといつて違法であるとはいえない。
あてはめ
本件において、原審が上告人本人の尋問手続を実施しなかったことは事実であるが、旧人事訴訟手続法の規定は、婚姻事件において必ず職権で当事者本人尋問をなすべきことを強制するものではない。裁判所が既に提出された他の証拠によって十分な心証を得ているのであれば、重ねて本人尋問を行う必要はないと判断される。したがって、原審が既に得た心証の程度に照らして証拠調べの限度を定めたことに、手続上の違法は認められない。
結論
婚姻事件においても、裁判所は既に得た心証の程度に応じて証拠調べの範囲を自由に定めることができ、必ず本人尋問を行う必要はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
人事訴訟法における職権探知主義の限界を示す。職権による証拠調べは裁判所の義務(探知義務)を伴うものの、その程度は裁判所の合理的な裁量に委ねられており、心証が形成されていれば証拠採用を却下できるという実務上の準則として機能する。
事件番号: 昭和27(オ)367 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】離婚に伴う財産分与(民法768条)の裁判において、裁判所は当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与の額を定める権限を有し、その裁量的判断は特段の事情がない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審(高等裁判所)が行った法令の解釈および財産分与の対象となる資産額…
事件番号: 昭和30(オ)899 / 裁判年月日: 昭和32年4月11日 / 結論: 棄却
妻が有効に離婚が成立したものと信じて、他の男子と婚姻をなした後、先夫から前婚についての離婚無効確認および後婚についての婚姻取消の訴を提起せられ、右各訴はいずれも妻の敗訴に確定した場合であつても、前婚につき、婚姻を継続し難い重大な事由があることを理由として、妻が離婚の訴を提起することを妨げるものではない。