原審確定の事実関係のもとでは、約束手形を延滞賃料の支払として譲渡すべく提供したことが、金銭債務の履行として債務の本旨に従った弁済の提供があったものとは解せられない。
約束手形を譲渡すべく提供しても金銭債務の本旨に従った弁済提供とはならないとされた事例。
民法493条
判旨
金銭債務の履行に代えて約束手形を譲渡すべく提供することは、特段の事情がない限り、債務の本旨に従った弁済の提供とは認められない。
問題の所在(論点)
金銭債務(本件では延滞賃料)の履行に代えて約束手形を譲渡提供することが、民法493条にいう「債務の本旨に従った」弁済の提供に該当するか。
規範
金銭債務の履行については、特約等の別段の定めがない限り、通貨による現実の支払がなされるべきである。したがって、約束手形の譲渡による提供は、債務の本旨に従った弁旨の提供(民法493条)には当たらない。
重要事実
上告人(債務者)は、延滞していた賃料の支払として、現金ではなく本件約束手形を譲渡すべく提供した。これに対し、当該提供が金銭債務の履行として有効な弁済の提供に該当するか否かが争点となった。
あてはめ
事件番号: 昭和42(オ)439 / 裁判年月日: 昭和42年7月13日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係のもとでは、土地賃借人の賃料債務の履行の提供ないし供託は約定の範囲を越えた土地の賃貸を右履行の受領により招来させるためのものであり、債務の本旨に従つたものとなすを得ない。
本件における延滞賃料の支払義務は金銭給付を目的とする債務である。これに対し、上告人が行ったのは約束手形の提供であった。金銭債務は原則として通貨により支払われるべきものであり、債権者が手形による支払を承諾するなどの特段の事情がない限り、手形の提供は通貨による支払と同視できない。原審の確定した事実関係によれば、このような特段の事情は認められず、手形の提供は債務の本旨に適うものとは評価できない。
結論
本件約束手形を譲渡すべく提供したことは、債務の本旨に従った弁済の提供とはいえず、債務不履行責任(遅延損害金等)を免れるものではない。
実務上の射程
金銭債務の弁済において、小切手や手形による支払が「債務の本旨」に従ったものといえるかは、当事者間の合意や取引慣行の有無に依存する。本判決は、そのような特段の事情がない限り、手形等の提供は有効な弁済の提供(民法493条)とはならないという原則を示すものである。答案上は、弁済の提供の有無を検討する際の「債務の本旨」の内容確定において活用すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)1068 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
特別事情による損害か否かは法律問題である。
事件番号: 昭和30(オ)860 / 裁判年月日: 昭和33年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人が継続的に賃料の受領を拒絶している場合、賃借人が弁済の提供を継続しなくても、その後の賃料を供託することは有効であり、賃料不払による解除は認められない。 第1 事案の概要:賃借人(被上告人)は、昭和24年から26年の各年末に賃料を持参したが、賃貸人(上告人)はこれを受理せず返還した。さらに昭和…
事件番号: 昭和32(オ)394 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
地代家賃統制令の統制額を超える賃料を、自己に支払義務のないことを知りながら支払つた賃借人は、その返還を請求することができない。