特別事情による損害か否かは法律問題である。
特別事情による損害か否かは法律問題か。
民法416条2項
判旨
特別事情による損害か否かは法律上の評価に係る問題であり、裁判所は当事者の主張を待たずに判断することができる。また、土地の返還遅延により発生した損害について、事前に具体的な明渡期限を付して通告していた事実は、特別事情の予見可能性を基礎付ける事情として考慮される。
問題の所在(論点)
特別事情による損害の成否を判断するにあたり当事者の主張が必要か、および明渡通告が繰り返された状況下での損害賠償責任の範囲が問題となった。
規範
債務不履行に基づく損害賠償において、特別の事情によって生じた損害(民法416条2項)に当たるか否かは法律上の問題であって、必ずしも当事者の主張を要するものではない。また、特別事情の予見可能性の有無は、債務者に対してなされた履行請求や明渡通告の態様等の客観的事実に基づき判断される。
重要事実
被上告人(債権者)の父が被上告人に代わり、昭和34年2月頃、上告人(債務者)に対し、一時使用地を2ヶ月後に明渡すべき旨を通告した。さらに同年3月3日、12日にも口頭で通告し、念のため3月20日付書面および同月24日付内容証明郵便をもって、同年5月15日限り土地を返還すべき旨を重ねて通告した。しかし、上告人はこれに応じず返還を遅延させ、17万2000円の損害が発生した。
事件番号: 昭和38(オ)1396 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
原審確定の事実関係のもとでは、約束手形を延滞賃料の支払として譲渡すべく提供したことが、金銭債務の履行として債務の本旨に従った弁済の提供があったものとは解せられない。
あてはめ
被上告人側は、上告人に対し、本件土地の処分を目的として複数回にわたり具体的期限(同年5月15日)を示して明渡しの通告を行っている。口頭のみならず書面や内容証明郵便により、返還の必要性と期限を明確に伝えていることから、債務者である上告人は、期限までに返還しない場合に特別の損害が生じることを予見し得たといえる。このような事実関係のもとでは、当該損害は特別事情による損害として債務者に賠償責任が認められる。また、これが特別事情に該当するか否かは裁判所が法的に判断すべき事項であり、当事者の明示的な主張がなくとも判断をなし得る。
結論
上告人の賠償すべき損害額を17万2000円とした原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
民法416条2項の「特別の事情」の主張立証責任に関し、事実の主張(明渡通告の存在等)は必要だが、それが「特別事情」に該当するという法的構成までを当事者が主張する必要はないことを示す。答案上は、特別損害の予見可能性を論じる際に、具体的な催告や通告の回数・態様をあてはめの指標とする際に活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)7 / 裁判年月日: 昭和32年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済契約の成立認定において、公正証書への記載がないことは直ちに契約の不在を意味せず、また当事者が明渡しを求めている対象土地について、相手方が代物弁済による所有権取得を主張する場合、その目的物は特定されていると解するのが相当である。 第1 事案の概要:上告人(債権者)は、被上告人(債務者)に対し…
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和26(オ)719 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求が権利の濫用に該当するか否かは、個別の事案における事実関係に基づいて判断される。本件のような事実関係の下では、当該請求が民法1条3項にいう権利の濫用に当たらないことは明白である。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人による本件建物の収去及び土地の明渡請求について争い、その請求が…
事件番号: 昭和36(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
原裁判所の裁判が公正妥当を欠くものであるとしても、裁判所において裁判を受ける権利を奪われたものとはいえないから、右裁判が憲法第三二条に違反したとはいえない(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判決、刑集二巻五号五一一頁、昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁参照)。