所有権にもとづく家屋鋭渡請求訴訟の確定判決において、右所有権の存否が判断されていても、右判断は、理由中の判断にすぎず、所有権の存否について既判力を生じない。
所有権にもとづく家屋明渡請求訴訟の確定判決と所有権の存否についての既判力。
民訴法199条
判旨
既判力は主文に包含されたもの、すなわち訴訟物である法律関係の存否についての判断にのみ生じ、判決理由中で判断された前提となる権利関係の存否については生じない。
問題の所在(論点)
前訴において、所有権に基づく建物明渡請求等の請求が棄却され、その理由中で「所有権が認められない」と判断された場合、後訴において当該所有権の存否を争うことは前訴判決の既判力によって遮断されるか。すなわち、理由中の判断に既判力が生じるかが問題となる。
規範
民事訴訟法第114条第1項(旧法第199条第1項)に基づき、確定判決の既判力は「主文に包含されたもの」に限り発生する。したがって、訴訟物である特定の請求権(給付請求権等)の存否については既判力が生じるが、その前提として理由中で判断された所有権の帰属などの法律関係については、たとえそれが争点となったものであっても既判力は及ばない。
重要事実
上告会社が、被上告人に対し、本件建物等の所有権に基づき明渡および賃料相当損害金を請求した別件訴訟において、裁判所は「訴外Dが上告会社に現物出資をしていないため上告会社には所有権が帰属しない」との判断を示した。本件訴訟において、再び本件不動産の所有権の帰属が問題となった際、上告人は別件訴訟の判断に既判力が生じている旨を主張して、原判決が上告人の所有を認めたことを既判力違反であると争った。
事件番号: 昭和29(オ)237 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の処分禁止仮処分の執行がなされていても、そのことのみによって、仮処分債権者がその後の権利関係の変動において実体法上あるいは手続法上の優先的地位を取得するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、対象不動産について処分禁止の仮処分を得ていたが、その後、当該不動産の権利関係に関し、自らが優先的…
あてはめ
別件訴訟(前訴)における訴訟物は、所有権に基づく家屋明渡請求権ならびに賃料(損害金)請求権という具体的な給付請求権である。前訴判決の理由中において、その前提となる「訴外Dからの現物出資の存否」や「上告人の所有権の帰属」について判断がなされているが、これらは訴訟物そのものではなく、主文を導き出すための理由中の判断にすぎない。したがって、民事訴訟法上の既判力はこれら理由中の判断には生じないため、本件訴訟において改めて所有権の存否を判断することは既判力に抵触しない。
結論
確定判決の既判力は理由中の判断には及ばないため、前訴の理由中で所有権が否定されていても、後訴でこれと矛盾する所有権の存否を認定することは許される。
実務上の射程
既判力の客観的範囲を訴訟物に限定する原則的な立場を明示したものである。司法試験においては、争点効(理由中の判断であっても一定の要件で拘束力を認める学説)を検討する際の前提として、現行法・判例上の既判力の範囲を画定するために引用すべき基礎的判例である。
事件番号: 昭和32(オ)356 / 裁判年月日: 昭和33年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が係争地の具体的地域を特定し、祖先伝来の所有地であると主張して所有権確認を求めている場合、当該土地につき請求を認容することは、処分権主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人は、第一審から本件係争地の具体的地域を明らかにしていた。その上で、原審において、当該土地は祖先伝来の所有地であると主…
事件番号: 昭和35(オ)1168 / 裁判年月日: 昭和36年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有者が主張する賃借権(本権)の成否が所有者によって争われている場合、占有者は民法188条による権利の推定を援用して賃貸借契約の立証責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:上告人(占有者)は、被上告人(所有者)の先代から昭和20年頃に本件土地を賃借したと主張し、自己に正当な権限があるとして…
事件番号: 昭和37(オ)671 / 裁判年月日: 昭和38年10月18日 / 結論: 棄却
原審において主張なく認定のない事実をもつて原判決の確認の利益に関する判断を非難することは、上告理由として採用できない。