抗告代理人が原裁判所から遠隔の地に在つた等の所論事情があつても、五日の特別抗告期間内に抗告を申し立てることが抗告人に不能を強いるものとはいえないから、特別抗告期間を五日という非常に短い期間に限つた民訴法第四一九条ノ二第二項の規定が憲法第三二条に違反するとの上告理由は、前提を欠き採用できない。
特別抗告期間を五日と定める民訴法第四一九条ノ二第二項が憲法第三二条に違反するとの上告理由が採用されなかつた事例。
民訴法419条ノ2第2項,憲法32条
判旨
民事訴訟法上の不変期間内に抗告状を提出することを要求することは、特段の事情がない限り、憲法32条の裁判を受ける権利を侵害するものではない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法が定める短期間の不変期間(5日間)内に抗告状を提出することを要求することが、憲法32条の裁判を受ける権利を侵害し、違憲となるか。
規範
法が定める不変期間(本件では5日間の抗告期間)は、裁判手続の迅速かつ確実な進行を確保するための合理的な期間制限である。当該期間内に不服申立てを行うことが客観的に不能であると認められない限り、期間制限の遵守を求めることは憲法32条に反しない。
重要事実
抗告人は、昭和37年11月14日に上告却下決定正本の送達を受けた。これに対し、抗告人は同年11月19日付の抗告状を作成したが、原裁判所(仙台高裁)に提出したのは同年11月20日であった。抗告人は、自身の置かれた特殊事情により、民訴法(旧法419条の2)所定の5日の期間内に抗告状を提出できなかったと主張し、この期間制限の適用は憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を奪うものであると訴えた。
事件番号: 昭和58(ク)94 / 裁判年月日: 昭和58年12月15日 / 結論: 棄却
一 民訴規則六一条の規定は憲法三二条に違反しない。 二 民訴規則六一条の定める抗告理由書提出期間の遵守の有無を到達主義によつて決しても憲法三二条に違反しない。
あてはめ
抗告人は、自身の特殊事情(詳細は判決文からは不明)により期間内の提出が不能であったと主張する。しかし、記録上、抗告人は期間満了日である19日に抗告状を作成しており、その翌日に提出している事実に照らせば、期間内に提出することが客観的に不能であったとは認められない。したがって、本件における5日間の期間制限が、国民に対して実現不可能な負担を強いているとはいえず、裁判を受ける権利を実質的に奪うものとは評価できない。
結論
民事訴訟法所定の抗告期間内に抗告を提起することを要求することは、憲法32条に違反しない。
実務上の射程
手続法上の期間制限(不変期間)の合憲性を肯定する基礎的な判例である。答案上は、期間徒過による不適法却下の妥当性や、憲法32条との適合性が問題となる場面で、合理的な期間制限である旨を論じる際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和46(ク)381 / 裁判年月日: 昭和46年12月23日 / 結論: 棄却
特別抗告の期間を五日と定める民訴法四一九条ノ二第二項の規定は憲法三二条に違反しない。
事件番号: 昭和32(ク)200 / 裁判年月日: 昭和32年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利は審級等の具体的内容を法律に委ねているため、上告理由書を提出しなかった場合に裁判所が決定で上告を却下する規定は合憲である。また、上告理由は書面自体に記載すべきであり、他事件の上告理由書を援用することは許されない。 第1 事案の概要:抗告人(上告人)は、民事訴訟法が定める…
事件番号: 昭和34(ク)84 / 裁判年月日: 昭和37年1月22日 / 結論: 棄却
上告理由書を原裁判所に提出せしめ、提出期間徒過の場合に原審において上告却下の裁判をすることは、憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和28(ク)145 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民訴法419条の2(現行330条等に対応)に定められた憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、単なる手続規定の違反を憲法違反と称して主張することは適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が憲法32条(裁判を受ける権利)に違反すると主張して最高裁判所に抗…