判旨
借地上の建物の譲渡に伴う敷地賃借権の譲渡について、土地賃貸人は承諾を与えるか否かの自由を有し、特段の事情がある場合でも承諾を義務付けられることはない。
問題の所在(論点)
借地上の建物が譲渡された場合、土地賃貸人は、特段の事情があるときであっても敷地賃借権の譲渡を承諾すべき義務を負うか(民法612条1項の承諾の自由)。
規範
現行法制下において、土地賃貸人は、借地上の建物所有権移転に伴う敷地賃借権の譲渡を承諾するかどうかの自由を有する。借地法10条(現:借地借家法14条等)が建物譲受人に建物買取請求権を付与していることは、賃貸人が承諾を強制されないことを前提とした制度的手当てであると解される。
重要事実
上告人は借地上の建物の所有権を取得し、それに伴い敷地賃借権の譲渡を受けた。上告人は、本件には「特別の事情」があるとして、土地賃貸人である相手方に対し、賃借権譲渡の承諾を義務付けるべきであると主張して争った。
あてはめ
借地法10条は、賃貸人が承諾を与えない場合に建物譲受人を救済するため、建物等の買取請求権を規定している。この規定の趣旨に照らせば、法は賃貸人が承諾を拒絶し得ることを当然の前提としている。したがって、上告人が主張するような「特別の事情」の有無にかかわらず、賃貸人が承諾を義務付けられることはない。
結論
土地賃貸人は賃借権譲渡を承諾するかどうかの自由を有し、承諾を義務付けられることはない。
実務上の射程
賃借権の無断譲渡・転貸において「背信的挙動と認めるに足りない特段の事情」がある場合に解除権が制限される理論(背信論)とは別次元の話である。本判決は、譲受人側から賃貸人に対して承諾そのものを法的に強制する請求はできないことを明確にしている。実務上は、承諾が得られない場合は借地借家法14条に基づく裁判所の代諾許可を求めるべきこととなる。
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
事件番号: 昭和32(オ)863 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡し、譲受人が目的物を占有している場合、賃貸人は民法612条2項に基づき賃貸借契約を解除することができ、その請求が直ちに信義則(民法1条2項)に反するものとはいえない。 第1 事案の概要:上告人A1は、被上告人が所有する土地の賃借権を有していた。A1は、当該土…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和31(オ)970 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得られなかった場合であっても、譲受人は地上建物の処分権を失わず、賃貸人に対し建物買取請求権を行使できる。 第1 事案の概要:上告人は土地の賃借権を譲り受けたが、賃貸人である相手方から当該譲渡についての承諾を得ることができなかった。上告人は、承諾が得られないこと…
事件番号: 昭和38(オ)482 / 裁判年月日: 昭和39年5月1日 / 結論: 棄却
身体障害者福祉法第二二条第一項は、国または地方公共団体が身体障害者の売店設置許可申請に対し必ずこれを許さなければならないことを定めたものではなく、その許可、不許可、並びに許可する場合如何なる態様において許可するかは国または地方公共団体の自由な判断により決定できることを定めたものと解すべきである。