身体障害者福祉法第二二条第一項は、国または地方公共団体が身体障害者の売店設置許可申請に対し必ずこれを許さなければならないことを定めたものではなく、その許可、不許可、並びに許可する場合如何なる態様において許可するかは国または地方公共団体の自由な判断により決定できることを定めたものと解すべきである。
身体障害者福祉法第二二条第一項の法意。
身体障害者福祉法22条1項
判旨
身体障害者福祉法22条1項は、国等に対し身体障害者からの売店設置許可申請を必ず許可し、あるいは普通賃貸借契約を締結することを義務付けるものではない。したがって、行政主体が身体障害者に対し売店設置を目的として土地を貸与した際、それが「一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合」に該当するならば、借地法の適用が排除される。
問題の所在(論点)
身体障害者福祉法22条1項に基づき、国や地方公共団体は身体障害者の売店設置申請に対し普通賃貸借契約を締結する義務を負うか。また、かかる土地使用関係において「一時使用のための借地権」の成否をどう判断すべきか。
規範
身体障害者福祉法22条1項の規定は、国または地方公共団体に対し、身体障害者からの売店設置許可申請への許可を強制し、または特定の契約態様(普通賃貸借等)による貸与を法的に義務付けるものではない。行政主体には、許可の是非および許可の態様について自由な判断権が認められる。したがって、当該土地利用の目的、期間、経緯等の諸事情を総合考慮し、一時的な便宜供与としての性格が認められる場合には、借地法(現:借地借家法25条)の「一時使用」に該当し、更新拒絶等の制限は適用されない。
重要事実
身体障害者である上告人は、公共団体から土地を借り受け、建物を所有して売店を設置していた。上告人は、身体障害者福祉法22条1項に基づき、国や地方公共団体は身体障害者に対して普通賃貸借による使用関係を認める義務があり、借地法の更新保護が適用されるべきであると主張した。しかし、原審は本件土地の使用関係を、その成立経緯や目的から「一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合」に該当すると認定し、建物収去および土地明渡しを認容した。
事件番号: 昭和29(オ)7 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】建物の売買に際し、買主が将来の一定期日までに建物を取り壊して運搬することを約し、その期日までの短期間に限り土地を賃貸した場合は、一時使用のための借地権(旧借地法9条)に該当する。このような一時使用の属性は契約の本質に関わるため、前提事実の認識に誤りがあれば民法95条の錯誤無効を招き得る。 第1 事…
あてはめ
身体障害者福祉法22条1項は行政主体の裁量を否定するものではなく、申請があれば必ず普通賃貸借契約を締結しなければならないとする根拠にはならない。本件においては、売店設置の許可や契約の態様は行政主体の自由な判断に委ねられている。原審が認定した事実関係によれば、単に異例の措置であるという点のみならず、諸般の事情から本件の使用関係は一時的な便宜を図る目的で設定されたものと認められるため、借地法9条(現:借地借家法25条)の「一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合」に該当すると評価するのが相当である。
結論
身体障害者福祉法22条1項は普通賃貸借の締結を強制するものではない。本件土地利用が一時使用目的であることが明らかな以上、借地法の適用はなく、土地明渡し請求は正当である。
実務上の射程
行政主体による公的な福祉目的の土地貸与であっても、借地借家法上の「一時使用」の成否は契約の目的や経緯等の客観的事実から判断される。本判決は、福祉関係法令の規定が直ちに私法上の契約自由や借地借家法の特則適用を否定するものではないことを示しており、行政側の裁量と一時使用の抗弁を認める際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
事件番号: 昭和37(オ)42 / 裁判年月日: 昭和38年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物の譲渡に伴う敷地賃借権の譲渡について、土地賃貸人は承諾を与えるか否かの自由を有し、特段の事情がある場合でも承諾を義務付けられることはない。 第1 事案の概要:上告人は借地上の建物の所有権を取得し、それに伴い敷地賃借権の譲渡を受けた。上告人は、本件には「特別の事情」があるとして、土地賃貸…
事件番号: 昭和36(オ)220 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮設建物所有を目的とした土地賃貸借について、その実態が一時使用目的であることが明らかな場合には、借地法の適用を受けない一時使用目的の借地権(借地借家法25条参照)として認められる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借は、仮設建物を所有することを目的として締結された。賃貸借期間の終了後、被上告人(賃貸…
事件番号: 昭和32(オ)162 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物所有を目的とする借地契約であっても、一時使用のための賃貸借(借地法9条)に該当し、かつ「必要時にいつでも解約できる」旨の特約がある場合には、賃貸人の債権者は代位権を行使して解約の申入れを行い、土地の明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者Dの債権者である被上告人は、Dから建…