仮処分の執行により仮の履行状態が作り出されたとしても、裁判所はかかる事実を斟酌しないで、本案の請求の当否を判断すべきものと解するのを相当とする。
仮処分の執行による仮の履行状態は本案の審理で斟酌されるべき事実か。
民訴法760条
判旨
仮処分の執行により仮の履行状態が作り出されたとしても、本案訴訟においてはその事実を斟酌せず、請求の当否を判断すべきである。また、当事者の証拠申出は「唯一の証拠方法」でない限り、裁判所が不要と認めれば却下できる。
問題の所在(論点)
1. 仮処分の執行により実現された仮の履行状態が、本案訴訟の判断に影響を及ぼすか。2. 裁判所はどのような場合に当事者の証拠申請を却下できるか。
規範
1. 仮処分の執行によって仮の履行状態(建物の収去等)が生じたとしても、本案裁判所は当該事実を斟酌せず、本案請求自体の当否を判断しなければならない。2. 証拠調べの要否については、それが「唯一の証拠方法」である場合を除き、裁判所が審理の経過に照らし必要がないと認めるときは、これを取り調べることを要しない。
重要事実
上告人は、建物の収去等をめぐる本案訴訟の過程で、当該建物が既に別の仮処分決定に基づく執行により収去された事実を主張した。しかし、原審(控訴審)はこの事実を斟酌せずに本案の請求の当否を判断した。また、原審において上告人は証人尋問を申請したが、裁判所は「唯一の証拠方法」ではないとしてこれを却下したため、上告人が手続の違法を訴えて上告した。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
あてはめ
1. 仮処分は暫定的な措置に過ぎず、権利関係の最終的な確定を行う本案訴訟においては、執行前の状態を基準に権利の存否を判断すべきである。したがって、建物が仮処分により収去された事実は、本案の勝敗を左右する事情として考慮されない。2. 本件の証人申請については、記録上「唯一の証拠方法」に該当しないことが明らかであり、裁判所が審理の経過から不要と判断して却下したことに手続上の違法は認められない。
結論
1. 仮処分の執行事実は本案判断において斟酌されない。2. 唯一の証拠方法でない証人申請を不要として却下した原審の判断は適法である。
実務上の射程
民事訴訟法および民事保全法の交錯領域において、保全執行の事実が本案の訴えの利益や請求の当否に影響しないことを示す。答案上では、被告が「既に建物は取り壊された(執行済み)」と抗弁しても、請求を棄却すべき理由にはならないことを論証する際に活用する。
事件番号: 昭和31(オ)916 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
仮処分の執行により仮の履行状態が作り出されたとしても、裁判所はかかる事実を斟酌しないで本案の請求の当否を判断すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)967 / 裁判年月日: 昭和32年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を争うにすぎない場合、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められないため、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人らが原審による事実認定の不当を主張して上告を提起したが、その主張は原審の適法な事実認定を争うにとどまるものであった。 第2 問題の所在(…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和26(オ)747 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決の事実認定に沿わない独自の事実を前提として憲法違反を主張することは、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実とは異なる事実を想定し、その想定事実に基づいて憲法違反(違憲)を主張して上告を提起した。 第2 問題の所在(論点):原判決の事実…