戦後インフレーシヨンのため貸金返還額と担保物の時価との均衡を失するに至つた場合において、借受金額のままの弁済供託により担保権消滅を主張することが信義則違反ないし権利濫用とならないとされた事例。
判旨
譲渡担保契約において、当事者間の内部関係で所有権を債務者に留保する旨の黙示の合意がある場合には、債権者による目的物の明渡請求や処分権の行使は制限される。
問題の所在(論点)
譲渡担保契約において、当事者の内部関係で所有権を債務者に留保する旨の合意が認められる場合に、債権者が所有権に基づいて目的物の明渡しを請求することができるか。
規範
譲渡担保の法的性質は当事者の合理的な意思解釈の問題である。契約の際、内部関係において所有権を債務者に留保する趣旨の合意(明示・黙示を問わない)が認められる場合には、その合意の範囲内において債権者の権利行使は拘束され、形式的な所有権移転に基づく請求は認められない。
重要事実
上告人と被上告人の間で、家屋を目的とする譲渡担保契約が締結された。原審は、当該契約において内部関係では所有権を被上告人(債務者)に留保する旨の黙示の合意があったと認定した。上告人は、譲渡担保においては所有権が外部・内部ともに債権者に移転すると推定すべきであると主張し、家屋の明渡しを求めて上告した。
あてはめ
本件では、原審において被上告人と上告人の内部関係で所有権を債務者に留保する旨の黙示の合意があったと事実認定されている。この場合、大審院判例が示す「意思が分明でないときは所有権が債権者に移転したと推定する」との法理は適用されない。また、上告人による家屋の明渡請求は、このような内部的合意に反するものであり、金員送付による履行の提供(民法493条)が適法になされている状況下では、権利の濫用や信義則に照らしても認められないと解される。
結論
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。
内部関係で所有権を債務者に留保する合意がある以上、債権者による所有権に基づく明渡請求は認められない。
実務上の射程
譲渡担保の法的構成が「所有権移転説」と「担保権設定説」の対立を超え、具体的な当事者の意思解釈を優先することを認めた判例である。答案上は、譲渡担保の性質決定において「当事者の意思解釈」の重要性を示す根拠として利用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1410 / 裁判年月日: 昭和39年2月13日 / 結論: 棄却
所有権転移仮登記の権利者が、仮登記後所有権取得登記を経た第三者に対し、右登記の抹消登記手続を請求した場合、裁判所が、仮登記に基づく本登記手続につき承諾を命ずる判決をしても、民訴法第一八六条に違反しない。
事件番号: 昭和38(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: 棄却
代理人が本人のためにする意思をもつて買受契約を締結する当時は、本人のためにすることを明示しなかつたが、後に代金を支払うときには、買主が本人であることを明らかにする等判示のような事情があるときは、「本人ノ為メニスルコト」を表示して契約をしたものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和27(オ)911 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産による代物弁済において、債務消滅の効力発生には登記等の具備を要するが、代物弁済契約自体に基づく所有権移転の効力は、特段の事情のない限り契約の成立(または停止条件の成就)によって生じる。 第1 事案の概要:債務者(上告人)と債権者との間で、期限までに債務の弁済がないことを停止条件とする代物弁済…