請求の目的たる建物の敷地そのものに変りがなく、単に地番の表示の誤を訂正したにすぎない場合には、請求原因にはなんらの変更がないというべきである。
請求原因に変更のない一事例。
232条
判旨
訴訟の対象である物件の表示に誤りがあった場合に、これを正しい表示に訂正することは、単なる表示上の訂正にすぎず、訴えの変更には当たらない。
問題の所在(論点)
訴訟の対象である土地の表示(地番)の誤りを是正することが、訴えの変更(請求の基礎の変更)に該当するか。
規範
訴訟の対象となる物件が、一審から二審を通じて同一のものを指していることが客観的に明らかな場合において、その地番等の表示の誤りを是正することは、請求原因の変更(民事訴訟法旧232条、現143条)ではなく、単なる「目的物件の表示上の訂正」にすぎない。この場合、請求の基礎に変更があるか否かを論ずるまでもなく、訴えの変更の手続を要しない。
重要事実
被上告人(原告)は、本件建物の明け渡しと、その敷地の移転登記(控訴審で履行不能による損害賠償に請求変更)を求めて提訴した。一審において、被上告人は敷地の地番を「1007番の1」と表示していたが、実際には「1010番の11」であった。原審(二審)において被上告人はこの誤りに気付き、表示を「1010番の11」と訂正した。上告人は、これが不適法な訴えの変更であると主張した。
あてはめ
本件において、被上告人が明け渡しを求める建物は一審から二審を通じて同一であり、その敷地として主張されている土地も、建物との関係において同一の対象を指していることが弁論の全趣旨から明らかである。地番の表示が「1007番の1」から「1010番の11」へと変更されているものの、これは実在する別個の土地への差し替えを意図したものではなく、特定の建物敷地という訴訟対象の同一性を維持したまま、単に表示の誤りを是正したに過ぎない。したがって、訴訟の対象そのものに変更はないといえる。
結論
本件の表示訂正は訴えの変更に該当せず、請求原因に変更はないため、不適法な訴えの変更があったとする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
物件の特定に誤りがあった場合の更正が、訴えの変更(143条)に該当するか、あるいは単なる表示の訂正(更正)として許容されるかの境界を示す。実務上は、当事者が内心で意図した対象が客観的に同一と認められ、相手方の防御に不当な不利益を与えない範囲であれば、表示の訂正として柔軟に処理できることを示唆している。
事件番号: 昭和34(オ)600 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分における目的物の表示に誤記がある場合であっても、それが明白な誤記であって、処分の目的物が客観的に特定可能であれば、当該処分の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:被上告人は、農地調整法に基づく買収および売渡処分を通じて本件農地の所有権を取得したと主張した。しかし、当該処分に係る買収計画書…
事件番号: 昭和37(オ)671 / 裁判年月日: 昭和38年10月18日 / 結論: 棄却
原審において主張なく認定のない事実をもつて原判決の確認の利益に関する判断を非難することは、上告理由として採用できない。
事件番号: 昭和33(オ)736 / 裁判年月日: 昭和35年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と…