上告人の所有であつた建物が被上告人の所有になつたと認定した場合、その原因が原始取得か承継取得か原判決の判示から明らかでないときは理由不備の違法がある。
理由不備の違法があるとされた事例。
民訴法395条1項6号
判旨
権利能力なき社団が所有する建物を、管理権者が自己の名で第三者に売却した場合、第三者の所有権取得の成否は、売却者が代表者として行ったか、表見代理が成立するか、あるいは僭称所有権者として振舞ったか等の具体的法的構成を明確にする必要がある。
問題の所在(論点)
権利能力なき社団の財産が、社団から委託を受けた管理者によって第三者に処分された場合、どのような法的構成によって所有権の移転を認めるべきか。また、社団が法人格を有しない未登記の状態であることをもって、第三者に所有権を対抗できないとする原審の判断の当否が問題となった。
規範
権利能力なき社団の財産は構成員に総有的に帰属するため、その処分の効力を判断するにあたっては、売買契約の当事者が誰であるか、及び代理権等の処分の権限が存在したかを厳格に確定しなければならない。単に第三者が善意であることや、社団が未登記であることをもって、直ちに社団側が所有権を対抗できないと解することは許されず、承継取得の具体的態様(代表行為、表見代理、無権限者による処分等)を法的根拠に基づいて特定すべきである。
重要事実
上告人(権利能力なき社団)は、その所有する建物の管理を代表理事Dらに委託していた。Dは、昭和25年9月30日、当該建物を被上告人に対し、自己の名において(または所有者のような立場で)代金16万6千円で売却した。原審は、上告人が未登記の社団であり、被上告人が善意の第三者であること、およびDが対外的に所有権者の地位で契約したことを理由に、Dが管理権を超えて処分したとしても被上告人は有効に所有権を取得したと判断した。
あてはめ
原審は被上告人の所有権取得を認めたが、その取得が原始取得か承継取得かが不明確である。承継取得とする場合でも、Dが「社団の代表者」として売却したのか、「表見代理人」として振舞ったのか、あるいは「自ら所有者と称して(僭称所有権者)」行為したのかが判示上判然としない。単に社団が未登記であるという事実のみから対抗力を否定し、当然に第三者の取得を認めることは、物権変動および代理の法理に照らして論理不備といわざるを得ない。
結論
原判決には理由不備の違法がある。被上告人が本件建物を取得した法的態容(代表行為の成否、表見代理の成否、あるいは無権利者の処分における信公保護の要件等)について審理を尽くさせるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
権利能力なき社団の取引において、代表者個人の名義や外形を信頼して取引した第三者を保護する場合には、民法110条等の表見代理の類推適用や、権利外観法理に基づく検討が必要であることを示唆している。答案上は、社団の財産帰属(総有)を前提としつつ、取引安全の観点から個別具体的な法的構成(特に代理権の有無や善意無過失の要件)を丁寧に検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和34(オ)1271 / 裁判年月日: 昭和37年1月16日 / 結論: 棄却
二割位取り毀された建物であつても、原審認定の事実関係のもとにおいては、社会通念上不動産であるといえる。