原判決は、昭和三八年(オ)第九〇三号昭和三九年二月一一日第三小法廷判決(民集一八巻二号三一五頁以下)が示した自動車損害賠償保障法第三条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」の基準につき、必要十分な審理を尽していない。
自動車の無断運転に関し、客観的外形的に自動車所有者のためにする運行と認められるか否かにつき審理不尽があるとされた事例
自動車損害賠償保障法3条,民法715条
判旨
自動車の所有者は、従業員の無断運転であっても、雇用関係等の密接な関係が存在し、かつ日常の管理状況等から客観的外形的に所有者のためにする運行と認められるときは、自賠法3条の運行供用者責任を負う。
問題の所在(論点)
従業員が会社所有の車両を無断で私的に運転し事故を起こした場合、会社は自賠法3条の「運行供用者」として賠償責任を負うか。
規範
自動車損害賠償保障法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたるかは、自動車の所有者と運転者との間に雇用関係等の密接な関係があり、かつ日常の自動車の運転および管理状況等から、客観的外形的にみて自動車所有者のためにする運行と認められるか否かによって判断すべきである。
重要事実
被告会社B2の社員B1は、会社の慰安旅行により休業中であった事故当日、会社に無断で、保管委託先の自転車店から会社所有の自動二輪車を借り出した。B1は私用のドライブを楽しんだ帰路、歩行者である原告と接触し傷害を負わせる事故を起こした。原審は、私用目的の無断運転であることを理由に、会社の損害賠償責任を否定した。
あてはめ
本件において、B1とB2との間には雇用関係が存在する。事故当日は休業中であり、私用目的の無断運転ではあったが、B2は車両の保管を外部(D自転車店)に委託していたという管理状況にある。このような状況下では、単に無断運転であることのみをもって直ちに運行供用者性を否定することはできず、日常の管理実態や車両の返還予定等に照らし、客観的外形的にB2の支配下にあったといえるかを審理する必要がある。
結論
B1の無断運転であっても、客観的外形的にみてB2のためにする運行と認められる余地があるため、その点について審理を尽くさず責任を否定した原判決には違法がある。
実務上の射程
従業員の無断運転(泥棒運転に準ずるケースを含む)における運行支配・運行利益の判断基準を示す。答案上は、まず所有者に原則として運行支配・利益が帰属することを述べた上で、例外的にそれが遮断されるかを「客観的外形的」な管理状況から判断する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和37(オ)1134 / 裁判年月日: 昭和40年7月16日 / 結論: 棄却
土建業者に雇われ自動車運転助手の業務に従事する者が、土建業者保有の自動車を無断運転して事故を起した場合、土建業者は自動車損害賠償保障法第三条に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。