地方自治法第二四三条の二第四項にいう損害は、当該普通地方公共団体の蒙る損害であつて、その全住民に関するものでなければならない。
地方自治法第二四三条の二第四項にいう損害の性質。
地方自治法243条の2第4項,信託法27条
判旨
住民訴訟(旧地方自治法243条の2第4項、現行242条の2第1項4号等)の対象となる損害は、普通地方公共団体が被る損害であって、かつ全住民の利益に関するものでなければならない。
問題の所在(論点)
旧地方自治法243条の2第4項(現行の住民訴訟に相当)に基づき損害補填を求めることができる「損害」の範囲。特に、一部の住民のみが委託者となっている信託財産に関する損害が、同条の対象となる「全住民に関する損害」に含まれるか。
規範
地方自治法が住民に対し役職員の違法な財務行為等に伴う損害補填を求める権能を与えた趣旨は、公金等が住民の租税等により形成された自治行政の経済的基礎をなすことに鑑み、団体及び全住民の利益を擁護し、住民の信託に基づく行政の公正な運営を確保する点にある。したがって、住民が損害補填に関する裁判を求めるには、その損害が当該地方公共団体の被る損害であって、かつ全住民に関するものでなければならない。
重要事実
愛媛県温泉郡a村の7部落が、他村の部落と共有していた山林の持分をa村に信託し、その信託財産の収益から受託者たる村が配分を受けた金銭につき、村長が誤って一般会計に繰り入れた。これに対し、上告人がa村の住民たる資格において、旧地方自治法243条の2第4項に基づき、村長に対して損害補填を求める訴えを提起した。
あてはめ
本件金銭は、特定の7部落が村に信託した財産から生じたものであり、仮に村長がこれを誤って一般会計に繰り入れたとしても、それによって生じる損害は委託者たる当該7部落のみに帰属するものである。この損害は、a村の住民全体の利益を構成する公金や財産等に関するものとはいえず、全住民に関する損害とは認められない。したがって、信託法上の損失填補請求の当否は格別、地方自治法上の住民の権能行使としては認められない。
結論
本件損害は全住民に関する損害にあたらないため、住民訴訟(損害補填に関する裁判)を求めることは許されない。
実務上の射程
住民訴訟の対象となる損害の公共性を画定した重要な判断である。特定の住民のみに帰属する利益や損害は、住民訴訟という客観訴訟の枠組みには馴染まないことを示しており、自治体の損害と一部住民の個別的損害を峻別する際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)992 / 裁判年月日: 昭和38年3月12日 / 結論: 棄却
地方税の賦課徴収権は地方自治法第二四三条の二第一項にいう財産にあたらない。
事件番号: 昭和43(行ツ)117 / 裁判年月日: 昭和48年11月27日 / 結論: 棄却
普通地方公共団体を受贈者とする贈与契約は、地方自治法(昭和三八年法律第九九号による改正前のもの)二四三条の二第四項所定の住民訴訟の対象とならない。