地方税の賦課徴収権は地方自治法第二四三条の二第一項にいう財産にあたらない。
地方税の賦課徴収権は地方自治法第二四三条の二第一項にいう財産にあたるか。
地方自治法243条の2第1項,地方自治法243条の2第4項
判旨
住民訴訟(旧地方自治法243条の2第4項)の対象となる「財産」とは、住民の負担による公租公課等で形成された公金および営造物以外の財産を指し、地方税の賦課徴収権はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
住民訴訟の対象となる「財産」(現行地方自治法242条の2第1項4号参照)に、地方公共団体の「地方税の賦課徴収権」が含まれるか。
規範
住民訴訟制度は、自治行政の経済的基礎をなす公金や財産の違法な支出・管理・処分を防止し、公共の利益を擁護するために法律が特別に認めた制度である。その趣旨に照らせば、対象となる「財産」とは、住民の負担にかかる公租公課によって形成された地方公共団体の公金および営造物以外の財産を意味し、行政権の作用である地方税の賦課徴収権は含まれない。また、本制度の態様は立法政策に属する事柄である。
重要事実
上告人(住民)は、被上告人(知事)が特定の対象に対して固定資産税を賦課徴収しないことが、当時の地方自治法243条の2第4項に規定される「財産の違法な処分」にあたると主張して、住民訴訟を提起した。原審が、税の賦課徴収権は同条の「財産」に含まれないとして訴えを退けたため、上告人はこれが法の解釈を誤り憲法前文に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和32(オ)983 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方税法に基づき、共有物に係る地租や家屋税の納税義務は共有者が連帯して負担するため、共有者の一人に対して全額の賦課徴収をすることは適法である。また、国税徴収法による滞納処分には、特段の規定がない限り、民事訴訟法中の強制執行に関する規定は準用されない。 第1 事案の概要:上告人は、他の共有者(Dおよ…
あてはめ
住民訴訟の対象は、既に形成された自治体の経済的基礎(公金、営造物、その他の具体的財産)の不当な流出や管理不全を是正する点にある。これに対し、地方税の賦課徴収権は、公金を形成するための行政上の権限そのものであり、住民の負担によって形成された「財産」そのものとはいえない。したがって、知事が固定資産税を賦課徴収しない不作為があったとしても、それは「財産の違法な処分」には該当しないと判断される。
結論
地方税の賦課徴収権は住民訴訟の対象となる「財産」に含まれない。したがって、賦課徴収をしないことは「財産の違法な処分」にあたらず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
住民訴訟の対象(客体)を限定的に解した重要判例である。現行法下においても、租税の賦課徴収を怠る事実については、法242条1項の「公金の賦課徴収を怠る事実」として監査請求等の対象になり得るが、本判決は「財産」概念から権限行使を除外した点で射程を有する。答案上は、対象行為が法242条1項の各号に該当するかを検討する際、具体的財産と行政権限を区別する根拠として用いる。
事件番号: 昭和37(オ)144 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
地方自治法第二四三条の二第四項にいう損害は、当該普通地方公共団体の蒙る損害であつて、その全住民に関するものでなければならない。
事件番号: 昭和62(行ツ)22 / 裁判年月日: 平成2年4月12日 / 結論: 破棄自判
保安林内の市有地に市道を建設するに際し、市建設局長らが請負人をして道路建設工事をさせる旨の工事施行決定書に決裁をしてこれに関与した行為は、道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であつて、住民訴訟の対象となる財産管理行為には当たらない。