保安林内の市有地に市道を建設するに際し、市建設局長らが請負人をして道路建設工事をさせる旨の工事施行決定書に決裁をしてこれに関与した行為は、道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であつて、住民訴訟の対象となる財産管理行為には当たらない。
保安林内の市有地における市道建設に関与した市建設局長らの行為が住民訴訟の対象となる財産管理行為に当たらないとされた事例
地方自治法242条の2第1項
判旨
住民訴訟の対象となる財務会計上の行為のうち「財産の管理」とは、財産の財産的価値に着目しその維持保全等を図る財務的処理を直接の目的とする行為を指し、道路建設行政の見地から行われる工事の実施行為はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
道路建設の一環として行われた工事の実施行為が、地方自治法242条1項にいう財務会計上の行為としての「財産の管理」に該当するか。
規範
地方自治法242条の2第1項に定める住民訴訟の対象は、同法242条1項に掲げられた財務会計上の行為又は事実に限られる。このうち「財産の管理」とは、当該財産の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする行為をいう。したがって、特定の行政目的を達成するための事業遂行に付随する行為は、直接に財務会計上の目的を有するものでない限り、これに当たらない。
重要事実
京都市建設局長ら(上告人ら)は、市道予定地である市所有の保安林において、保安林指定の解除前に道路建設工事を業者に行わせた。その後、工事中止に伴い原状回復のための植栽費用約71万円を市が支出した。住民(被上告人ら)は、本件工事が「違法な財産の管理」に当たるとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、市に代位して上告人らに対し損害賠償を請求する住民訴訟を提起した。
あてはめ
上告人らの行為は、認定された路線及び道路区域に基づき、市道予定地を道路状の形状に整備することで道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという「道路行政担当者としての行為」である。これは道路建設行政の見地からなされたものであり、本件土地の森林(保安林)としての「財産的価値に着目」し、その価値の維持・保全を図る「財務的処理を直接の目的」とするものとは認められない。したがって、財務会計上の性質を有する財産管理行為には当たらないと評価される。
結論
本件工事の実施行為は住民訴訟の対象となる「財産の管理」に当たらない。したがって、本件訴えは対象を欠き不適法であるから、却下すべきである。
実務上の射程
住民訴訟の対象となる財務会計上の行為の意義を限定的に解した重要判例である。答案上では、問題となっている行政行為が「専ら財務会計的な目的」で行われたのか、それとも「本来の行政目的(道路、文教、厚生等)」の遂行そのものに当たるのかを区別し、後者の場合は原則として対象外とする構成に用いる。
事件番号: 昭和62(行ツ)76 / 裁判年月日: 昭和63年4月22日 / 結論: 破棄自判
町の公金九三八万円が秘密裡に用地買収の補償金として支出された場合において、その約四年半後に大見出しに「用地買収費 予算計上せず処理」と掲げ、「用地買収費の九百三十八万円が計上されていない事が明らかになり」などと記載した町の広報誌が全戸配布されたことにより右公金の支出がそのころまでには町の住民にとつて明らかになつたにもか…