市がその施行する土地区画整理事業において土地区画整理法九六条二項、一〇四条一一項に基づいて取得した保留地を随意契約の方法により売却する行為は、住民訴訟の対象となる「財産の処分」及び「契約の締結」に当たる。
市がその施行する土地区画整理事業において取得した保留地を随意契約の方法により売却する行為と住民訴訟の対象となる「財産の処分」及び「契約の締結」
地方自治法237条1項,地方自治法238条1項,地方自治法242条1項,地方自治法242条の2第1項,土地区画整理法96条2項,土地区画整理法104条11項,土地区画整理法108条1項,土地区画整理法118条1項
判旨
市が土地区画整理事業の施行者として取得した保留地の処分は、地方自治法上の「財産の処分」及び「契約の締結」に該当し、住民訴訟の対象となる。保留地は公有財産であり、その処分方法を定める施行規程は財務会計上の規範にあたるため、違法な売却は市の損害に直結すると解される。
問題の所在(論点)
市が土地区画整理事業の施行者として取得した保留地の処分行為が、地方自治法242条1項にいう住民訴訟の対象(「財産の処分」または「契約の締結」)に含まれるか。
規範
1. 地方自治法242条1項所定の「財産の処分」及び「契約の締結」の対象となる「財産」とは、住民の公租公課等によって形成されたものか否かを問わず、同法238条1項所定の公有財産(不動産等)を指す。 2. 市が土地区画整理事業の施行者として取得する保留地は、普通地方公共団体がその事務として取得するものであるから、その処分は財務会計上の行為に該当する。 3. 保留地の処分方法を定める施行規程(土地区画整理法53条2項6号)は、財務会計上の観点から処分方法を規制するものであり、財務会計職員が遵守すべき「財務会計上の規範」といえる。
重要事実
事件番号: 昭和62(行ツ)22 / 裁判年月日: 平成2年4月12日 / 結論: 破棄自判
保安林内の市有地に市道を建設するに際し、市建設局長らが請負人をして道路建設工事をさせる旨の工事施行決定書に決裁をしてこれに関与した行為は、道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であつて、住民訴訟の対象となる財産管理行為には当たらない。
福山市(施行者)は、土地区画整理事業により取得した保留地について、換地処分の公告の翌日に所有権を取得した。その後、市は当該保留地を施行規程(市条例)に定められた一般競争入札によらず、特定の相手方に対し随意契約かつ時価より低廉な価格で売却した。これに対し住民が、当時の市長を被告として、時価との差額相当の損害賠償を求める住民訴訟を提起したところ、原審は保留地が住民訴訟の対象となる「財産」に当たらないとして訴えを却下した。
あてはめ
まず、本件保留地は換地処分の公告により福山市の所有に属しており、法238条1項1号の不動産として「財産」に該当する。また、市は施行者としての地位と普通地方公共団体としての地位を別個独立に有するわけではなく、本件事業は市の事務として行われている。さらに、保留地の処分は事業費用に充てるための財産的価値に着目した行為であり、廉価販売は一般財源からの負担増、すなわち市への損害をもたらす。したがって、施行規程という財務会計上の規範に反する売却行為の適法性を審査することは、住民訴訟の趣旨に合致する。
結論
本件保留地の売却は、地方自治法242条1項所定の「財産の処分」及び「契約の締結」に当たり、住民訴訟の対象となる。よって、本件訴えを不適法とした原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
住民訴訟の対象となる「財務会計上の行為」の範囲を公有財産全般に広げ、土地区画整理事業等の特別の目的を持つ財産処分についても、市の一般財源に影響を及ぼす限り広く住民訴訟の対象に含まれることを明示した。答案上は、対象行為の該当性を検討する際の「財産」の定義や「財務会計上の規範」の判断要素として活用できる。
事件番号: 昭和49(行ツ)90 / 裁判年月日: 昭和51年3月30日 / 結論: 棄却
土地区画整理法に基づく換地処分を地方自治法二四二条の二所定のいわゆる住民訴訟の対象とすることは、許されない。