甲の乙に対する所有権移転登記が抹消されて甲が登記名義を回復したとき甲は丙に対し売買を原因とする所有権移転登記をせよとの丙の請求は、将来の給付請求として許される。
被告の登記名義回復を条件とする将来の給付請求が許された事例。
民訴法226条
判旨
将来の給付の訴えが認められるための要件である「あらかじめその請求をする必要がある場合」の判断基準を示し、登記義務者が仮装の売買に基づき登記を移転させている等の事情がある場合には、当該要件を満たすとした。
問題の所在(論点)
権利義務の発生が将来にわたる場合、または履行期が将来である場合において、被告らが登記義務を争い、かつ仮装の売買によって登記名義を移転させているような状況が、将来の給付の訴えの要件である「あらかじめその請求をする必要がある場合」に該当するか。
規範
将来の給付の訴え(現行民事訴訟法135条、旧226条)が適法となるためには、「あらかじめその請求をする必要がある場合」に該当しなければならない。この要件は、将来の履行期において債務者が任意に履行しないおそれがあるか、あるいは権利の存在自体を争っている等の事情を総合的に考慮して判断される。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人A1(被告)に対し、本件土地の所有権移転登記請求を行った。A1は、上告人A2(被告)との間で本件土地の売買契約を締結したが、この契約は仮装のものであった。被上告人は、将来の条件成就等に伴う登記請求を維持するために訴えを提起したが、上告人らは「あらかじめ請求する必要」がないとして、訴えの適法性を争った。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
あてはめ
本件において、上告人A1とA2の間の売買契約は仮装のものであり、真実の権利関係を反映していない。このような状況下では、将来、被上告人が正当な権利行使を行う際に、A1が任意に登記に応じない蓋然性が極めて高い。したがって、権利の実現を確実にするために、現時点で判決を得ておく必要性が認められる。
結論
上告人A1に対する所有権移転登記請求は、あらかじめその請求をなす必要がある場合に該当し、将来の給付の訴えとして適法である。
実務上の射程
将来の給付の訴えの適法性(135条)に関するリーディングケース。登記請求権において、相手方が権利を争っている場合や、目的物の処分を画策しているような場合には、「あらかじめ請求する必要」が肯定されやすい。実務上は、給付の判決をあらかじめ得ておく必要性の有無を、義務者の不誠実な態度や権利の帰属に関する争いの程度から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(オ)108 / 裁判年月日: 昭和28年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の条件が成就するまでの間、一時的に所有権を移転させる合意は仮装のものに過ぎず、真実の所有権移転の効力は生じない。また、他主占有権原に基づき、かつ善意等の要件を欠く場合には、取得時効は成立しない。 第1 事案の概要:被上告人と訴外Dとの間で、本件不動産の所有権移転契約が締結された。しかし、その実…
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和37(オ)1458 / 裁判年月日: 昭和38年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】意思表示の動機が相手方に表示されていたとしても、それだけで直ちに法律行為の要素(内容)になるわけではなく、諸般の事情に照らして契約の重要な内容となっていたか否かによって判断される。 第1 事案の概要:本件土地売買契約は、買主側から当該土地を大井権現消防署の敷地の候補地としたい旨の話が出されたことを…
事件番号: 昭和35(オ)488 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買における知事の許可は、売買による所有権移転の効力発生要件に過ぎず、売買契約そのものの成立要件ではない。したがって、農地売買契約の成立日は、知事の許可の日ではなく、現実に売買の合意がなされた日となる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で農地の売買契約が締結され、その後、当該売買に基…