言動による侮辱に基づく損害賠償を肯定した事例。
判旨
他者を侮辱する言動が不法行為(民法709条)を構成する場合、被害者の言動等の諸事情を斟酌して慰謝料額を算定することが認められる。また、具体的な侮辱行為が権利侵害に当たるとした原審の判断は、特段の事情がない限り正当として維持される。
問題の所在(論点)
特定の言動が不法行為上の権利侵害(侮辱)を構成するか、および、損害額の算定において被害者側の事情をどの程度考慮すべきかが問題となった。
規範
不法行為(民法709条)における名誉感情の侵害(侮辱)の成否は、社会通念上許容される限度を超える権利侵害があったか否かにより判断される。損害額(慰謝料)の算定に当たっては、加害者の言動のみならず、被害者側の言動や事案に現れた一切の事情を総合的に斟酌して決定される。
重要事実
上告人(控訴人)が被上告人(被控訴人)に対し、原判決が認定した態様によって侮辱的な言動を行った。被上告人はこれにより権利を侵害されたとして損害賠償を請求した。原審は、上告人の言動が違法な権利侵害に当たると判断した上で、被上告人自身の言動等の事情も考慮に入れ、上告人に対し金1万円の支払いを命じた。
あてはめ
上告人の言動は、原判決の挙示する証拠に照らせば被上告人を侮辱したものと認められ、違法な権利侵害に当たる。損害額については、被上告人の言動その他一切の事情を斟酌した上で、1万円を支払うべきとした原審の判断は相当である。したがって、理由不備や法令適用の誤りといった上告理由は認められない。
結論
上告人の言動による権利侵害を認め、諸般の事情を考慮して1万円の慰謝料支払いを命じた原判決は正当であるとして、上告を棄却した。
事件番号: 昭和34(オ)80 / 裁判年月日: 昭和36年6月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】名誉毀損による不法行為が成立するためには、単に侮蔑的な言辞を吐くだけでなく、その場に被害者がいたか、あるいは第三者の関与により社会的な評価が低下し得る客観的状況があったか等の事実関係を審理する必要がある。 第1 事案の概要:被告と原告は建物の売買を巡り不仲であった。被告は路上で第三者に対し「町内に…
実務上の射程
侮辱による名誉感情侵害が不法行為となることを前提に、損害算定において「被害者側の落ち度」や「誘発要因」を考慮できることを示した事例。答案上は、名誉感情侵害の違法性判断後の「損害」および「過失相殺(的しんしゃく)」の文脈で、事案の個別事情を総合考慮する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)634 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
一 法人に対する民法第四四条に基く損害賠償の請求と同法第七一五条に基く損害賠償の請求とは、訴訟物を異にする。 二 一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。 三 新聞に事実に反する記事を掲載頒布し、これにより他人の名誉を毀損すること…
事件番号: 昭和37(オ)815 / 裁判年月日: 昭和41年6月23日 / 結論: 棄却
名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。