一 法人に対する民法第四四条に基く損害賠償の請求と同法第七一五条に基く損害賠償の請求とは、訴訟物を異にする。 二 一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。 三 新聞に事実に反する記事を掲載頒布し、これにより他人の名誉を毀損することは単なる過失に基く場合でも、これを正当業務行為ということはできない。
一 法人に対する民法第四四条に基く請求と同法第七一五条に基く請求との訴訟物の異同 二 新聞記事が名誉を毀損すべき内容の意味かどうかの判断基準 三 新聞記事により過失に基き名誉を毀損した場合と正当業務行為の主張の許否
民法44条,民法715条,民法709条,民訴法224条1項
判旨
名誉毀損の成否における表現内容の解釈は、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすべきであり、新聞に事実に反する記事を掲載して名誉を毀損する行為は、過失による場合であっても正当業務行為とは認められない。
問題の所在(論点)
1. 名誉毀損における表現内容の解釈基準(一般読者基準の適否)。 2. 事実に反する新聞記事の掲載が、過失による場合に正当業務行為として違法性が阻却されるか。
規範
名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることをいい、対象となる表現の意味内容は、一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈されるべきである。また、新聞が事実に反する記事を掲載して他人の名誉を毀損する行為は、単なる過失による場合であっても、正当業務行為として違法性が阻却されることはない。
重要事実
上告人(新聞社)が発行する新聞に、被上告人の名誉を毀損する内容の記事が掲載された。当該記事は、精読すれば別個の意味に解釈し得る余地があったものの、一般的な読者が通常読み進める態様においては、被上告人の社会的評価を低下させる事実を摘示するものとして理解される内容であった。
事件番号: 昭和37(オ)1001 / 裁判年月日: 昭和38年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他者を侮辱する言動が不法行為(民法709条)を構成する場合、被害者の言動等の諸事情を斟酌して慰謝料額を算定することが認められる。また、具体的な侮辱行為が権利侵害に当たるとした原審の判断は、特段の事情がない限り正当として維持される。 第1 事案の概要:上告人(控訴人)が被上告人(被控訴人)に対し、原…
あてはめ
本件記事は、精読すれば異なる解釈が可能であるとしても、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、事実に反して被上告人の社会的評価を傷つける内容といえる。したがって、名誉毀損に該当する。また、報道機関である新聞社による記事掲載であっても、事実に反し他人の名誉を毀損する以上、過失がある場合には正当な業務の範囲内とはいえず、違法性は阻却されない。
結論
一般読者の普通の注意と読み方を基準として名誉毀損の成立を認めた原判決は相当であり、過失による名誉毀損について正当業務行為の成立を否定した判断に誤りはない。
実務上の射程
名誉毀損における表現内容の確定手法として「一般読者基準」を確立した重要な判例である。司法試験においては、表現の多義性が問題となる事案で、一部の専門的な解釈ではなく、一般人の受取方を基準に事実摘示の有無を論じる際に用いる。また、違法性阻却事由としての正当業務行為(刑法35条準用)の主張を封じる際の論拠としても活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)80 / 裁判年月日: 昭和36年6月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】名誉毀損による不法行為が成立するためには、単に侮蔑的な言辞を吐くだけでなく、その場に被害者がいたか、あるいは第三者の関与により社会的な評価が低下し得る客観的状況があったか等の事実関係を審理する必要がある。 第1 事案の概要:被告と原告は建物の売買を巡り不仲であった。被告は路上で第三者に対し「町内に…