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民法第一八九条第二項の適用を認めた一事例。
判旨
裁判上の自白が成立した場合であっても、その撤回が時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)に該当する場合には、裁判所はこれを排斥することができる。
問題の所在(論点)
裁判上の自白が成立した後にされた撤回(または新たな権利主張)が、時機に後れた攻撃防御方法として民訴法157条1項により排斥され得るか。
規範
裁判上の自白の撤回は、原則として反真実かつ錯誤に基づく場合に限り許容されるが、民事訴訟法上の適時提出主義の要請から、自白の撤回(またはこれに伴う新たな主張の提出)が「時機に後れて提出されたもの」と認められる場合には、同法157条1項に基づき却下することができる。
重要事実
原告(被上告人)が被告(上告人)に対し、電動機等の所有権を主張して訴えを提起した。被告は、第一審の第1回口頭弁論期日において、当該電動機が原告の所有に属することを自白したが、その後、第15回最終口頭弁論期日に至って、当該自白を撤回し、電動機は被告の所有に属する旨の主張を行った。
あてはめ
被告は第1回期日で自白をしていながら、約1年半が経過し審理が終結に向かう第15回最終期日に至って、初めて自白を撤回し所有権を主張した。このような主張の変更は、先行する自白と矛盾するのみならず、審理の著しい遅延を招くものといえる。したがって、当該主張の提出は「時機に後れたもの」と評価され、却下されるべきである。
結論
被告による自白の撤回(所有権主張)を、時機に後れた攻撃防御方法として排斥した原審の判断は正当である。
実務上の射程
自白の撤回の要件(反真実・錯誤)を満たすか否かの判断に先立ち、民訴法157条による却下という訴訟法上の規律が適用されることを示した。答案上は、主張の変遷が激しい事案で、自白の拘束力だけでなく適時提出主義の観点からも検討する際に有用である。
事件番号: 昭和35(オ)986 / 裁判年月日: 昭和37年11月16日 / 結論: 棄却
合意解除の事実を当事者の主張に基づいて認定している以上、返還時期について主張と多少異る時期を認定しても弁論主義に違反したとはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)759 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 破棄差戻
一 控訴審において初めて提出した攻撃防禦の方法が、民訴第一三九条にいわゆる時機に後れたるや否やは、第一審以来の訴訟手続の経過を通観してこれを判断すべく、時機に後れた攻撃防禦の方法であつても、当事者に故意または重大な過失が存し、かつ訴訟の完結を遅延せしめたる場合でなければ、同条によりこれを却下し得ないものと解すべきである…