合意解除の事実を当事者の主張に基づいて認定している以上、返還時期について主張と多少異る時期を認定しても弁論主義に違反したとはいえない。
当事者の主張しない事実を認定したものとはいえないとした事例。
民訴法186条
判旨
合意解除に基づく返還金債務の発生を認める際、当事者が主張した時期とは異なる返還時期を認定したとしても、主要事実である合意解除の事実自体を認めている以上、弁論主義に違反しない。
問題の所在(論点)
当事者が主張した債務の弁済期と異なる時期を裁判所が認定することは、弁論主義(民事訴訟法旧186条、現246条参照)に違反し、当事者の主張しない事実を認定したことになるか。
規範
裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎として認定してはならない(弁論主義)。しかし、契約の合意解除の事実という主要事実に争いがない場合において、それに附随する返還時期等の細部について当事者の主張と多少異なる認定をすることは、当事者の主張した法的構成の枠内にある限り、直ちに弁論主義違反とはならない。
重要事実
被上告人が上告人に対し、契約の合意解除に基づき180万円の返還を請求した。被上告人は返還時期を「合意解除の日である7月30日」と主張したが、原審が引用する第一審判決は、証拠に基づき返還時期を「8月末日」と認定した。上告人は、当事者が主張していない時期を認定したことは弁論主義に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被上告人は本件契約が合意解除されたという主要事実を主張している。裁判所がこの合意解除の事実を認める際、その効果として発生する返還金の支払時期について、被上告人が主張する7月30日ではなく、証拠により認められた8月末日であると認定したとしても、それは合意解除という主張された事実の範囲内での認定にすぎない。したがって、主張と多少異なる時期を認定したことは、当事者の主張しない事実を不意打ちで認定した違法があるとはいえない。
結論
返還時期について主張と異なる認定をしても、主要事実である合意解除の主張に基づいている以上、弁論主義違反の違法はない。
実務上の射程
弁論主義の対象となる「主要事実」の認定において、付随的な日時等の細部が主張と一致しない場合でも、その請求の根拠となる法的性質を維持している限り許容されることを示す。事実認定の合理的な裁量を認めた事例として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)76 / 裁判年月日: 昭和25年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の証拠取捨や事実認定の当否を争うものである場合、それは原審の職権に属する事項を論難するものであり、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決における証拠の取捨、判断および事実の認定に不服があるとして上告を申し立てたが、具体的な憲法違反や判例違反等の適法な上告事…
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昭和二〇年一〇月頃権利金として四、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借した旨の主張に対し、昭和二一年九月頃権利金として一、〇〇〇円を支払い当該八〇坪を賃借したとの認定をしても、当事者の主張の範囲を逸脱した認定とはいえない。