裁判上の和解は、確定判決と異り、一面私法上の契約たる性質をも有し、私法上の無効原因があるときは、初めから無効である。
裁判上の和解の無効。
民訴法203条
判旨
裁判上の和解は、確定判決と異なり一面で私法上の契約の性質を有するため、私法上の無効原因があるときは当然に無効となる。借地法上の強行法規に反し、借地権者に不利な期間を定めた和解条項は、同法により無効と解される。
問題の所在(論点)
裁判上の和解に私法上の無効原因がある場合、その効力はどうなるか。また、借地法2条(存続期間)に反する和解条項は、同法11条(強行規定)により無効となるか。
規範
裁判上の和解は、確定判決と異なり一面において私法上の契約としての性質を併せ持つ。したがって、内容に私法上の無効原因(強行法規違反等)が存在する場合には、和解全体または当該条項は当然に無効となる。
重要事実
上告人と被上告人は、昭和25年12月に本件土地につき、賃貸借期間を昭和30年9月末日までとする内容を含む裁判上の和解を成立させた。本件土地の利用は一時使用目的とは認められず、通常の建物所有を目的とする借地権の設定であった。和解後、被上告人側は当該期間制限が借地法(旧法)の強行規定に反し無効であると主張した。
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
あてはめ
本件和解は一時使用目的ではなく、通常の建物所有を目的とする新たな土地賃貸借契約である。そうすると、昭和30年までとする存続期間の定めは借地法2条の期間制限を下回るものであり、借地権者に不利な契約条件といえる。したがって、同法11条により当該期間の定めは無効であり、期間の定めがないものとみなされる。和解には私法上の契約の側面がある以上、このような強行法規違反による無効が認められるべきである。
結論
本件和解のうち存続期間を定める条項は無効であり、裁判上の和解といえども私法上の無効原因があればその効力は否定される。
実務上の射程
裁判上の和解の二面性(訴訟行為かつ私法上の法律行為)を根拠に、公序良俗違反や強行規定違反による無効を主張する際のリーディングケース。実務上は、和解に既判力があるとしても、私法上の瑕疵を理由に無効を主張できるとする「制限的既判力説」の文脈で引用される。
事件番号: 昭和26(オ)333 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 破棄差戻
賃貸土地が法令上当然に信託財産となつたときは、委託者たる土地所有者は、爾後右土地につき賃貸借の解約申入をすることができない。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和33(オ)456 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有を目的とする土地の賃貸借であっても、それが一時使用のためのものであることが明らかな場合には、借地法(現・借地借家法)の適用はなく、民法617条に基づく解約申入れによって終了し得る。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)に対し、当初は木箱集積場所として「明渡要求次第無条…
事件番号: 昭和35(オ)946 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は借地法第四条第二項の規定による地上建物の買取請求権を有しない。(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、民集一四巻一〇八頁参照)