賃貸土地が法令上当然に信託財産となつたときは、委託者たる土地所有者は、爾後右土地につき賃貸借の解約申入をすることができない。
賃貸土地が法令上当然に信託財産となつた場合と委託者による賃貸借解約申入の適否
信託法1条,昭和22年政令115号2条,昭和22年大蔵省告示133号
判旨
閉鎖機関の旧勘定に属する資産が政令に基づき他行へ信託的に移転した場合、元の閉鎖機関は当該資産の管理処分権を喪失するため、特段の事情がない限り賃貸人として解約申し入れを行う権能を有しない。
問題の所在(論点)
政令に基づく資産の信託的移転後において、元の所有者(委託者)が賃貸人として解約申し入れを行う権能を有するか。
規範
法令の規定により資産が信託財産として他者に移転した場合、委託者となった元の所有者は、当該資産に関する管理処分権を喪失する。したがって、当該資産に係る賃貸借契約についても、賃貸人としての解約申入権などの実体的権利を行使することはできない。
重要事実
1. 被上告人(銀行)は、昭和19年に本件土地を取得し、上告人Aに対する賃貸人の地位を承継した。2. 昭和22年、政令115号に基づき、被上告人の旧勘定に属する国内資産(本件土地を含む)は、大蔵大臣の指定する時に受託者たるE銀行に移転し、信託財産となった。3. 被上告人は、右移転後の昭和23年12月に、上告人に対し閉鎖機関令13条に基づき賃貸借の解約申し入れを行った。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
あてはめ
1. 昭和22年政令115号2条によれば、本件土地を含む旧勘定資産は、昭和22年6月30日をもってE銀行に移転し、被上告人を委託者・受益者、E銀行を受託者とする信託財産となった。2. 信託条件の認可等の手続が未了であっても、資産が信託財産となった効果は否定されない。3. したがって、被上告人は当該指定時以降、本件土地の管理処分権を失っており、特段の事情がない限り、賃貸人としての解約申入れという管理処分行為を行う権能を有しないと評価される。
結論
被上告人による解約申し入れは権能なき者によるものであり、無効である。よって、賃貸借契約の終了を認めた原判決には審理不尽または法令解釈の誤りがある。
実務上の射程
信託の法的性質(受託者への権利移転と委託者の権限喪失)を、賃貸借関係という具体的法律関係に反映させた事例である。特定の法令(閉鎖機関令等)に基づく移転であっても、私法上の管理処分権の所在を重視して、解約申入れの有効性を判断すべきことを示している。
事件番号: 昭和26(オ)829 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合、その建物に居住する占有者は、賃借人が建物を収去し土地を明け渡すべき義務を負う以上、これを妨げて占有を継続する権限を有しない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、被上告人(土地賃貸人)から本件土地を賃借し、地上に建物を所有していたが、賃料不払に…
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和36(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約解除後賃借人およびその転借人に窮状の起ることをもつて、右解除権の行使を権利濫用ということはできない。
事件番号: 昭和31(オ)763 / 裁判年月日: 昭和34年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借人が地上建物を第三者に売却した後、土地所有者との間で土地賃貸借契約を合意解除しても、建物買受人が土地利用権を取得していない以上、建物買受人は土地所有者に対して建物の所有による土地の占有権原を主張できない。 第1 事案の概要:土地所有者Dは、Eに対して本件土地を賃貸し、Eは地上に本件建物を所…