右の場合に、もはや競落人は、競落代金の支払によつて所有権を取得することはできない(昭和三七年八月二八日第三小法廷判決参照)。
競落代金支払前に抵当債務が消減した場合の競落人の所有権取得。
競売法2条
判旨
競売手続において、競落許可決定が確定した後であっても、代金支払前に債務が消滅した場合には、競落人はその後の代金支払によって不動産の所有権を取得することはできない。
問題の所在(論点)
競落許可決定確定後、かつ代金支払前に債務が消滅した場合において、競落人はその後の代金支払により不動産の所有権を取得できるか。また、債務者が不服申立手段を講じなかったことが、所有権取得の可否に影響を及ぼすか。
規範
競売法による競売手続(現行の民事執行法に基づく抵当権実行等に相当)において、競落許可決定が確定したとしても、競売手続が完了する前(代金支払前)に債務が消滅したときは、その競売手続の基礎となる実体上の権利関係が消滅している以上、競落人はその後の代金支払によっても対象不動産の所有権を取得しえない。
重要事実
本件では、不動産の競落許可決定が確定していたが、競落人が競落代金を支払う前に、当該競売手続の根拠となっていた債務が消滅した。その後、競落人は代金の支払いを行ったが、債務消滅後の手続履行によって所有権が移転するか否かが争点となった。なお、債務者が競売手続において異議抗告等の不服申立てを行ったか否かという事情も付随したが、結論に影響するか検討された。
あてはめ
本件において、競落許可決定は確定しているものの、競売手続の完了を意味する「代金の支払」が行われるより前の段階で債務が消滅している。競売は債権回収のための手続であり、その基礎となる債務が消滅した以上、手続を続行して所有権を移転させる実体上の根拠は失われる。この理は、債務者が異議抗告等の手続的な不服申立手段を尽くしたか否かによって左右されるものではない。したがって、実体上の債務消滅という事実が先行する以上、その後の形式的な代金支払によって所有権取得という法的効果が生じる余地はないと解される。
結論
競落人は、たとえ代金を支払ったとしても、本件不動産の所有権を取得することはできない。
実務上の射程
抵当権実行による競売等の公売において、代金納付による所有権移転の効力(民執法79条等)と実体上の債務消滅の関係を規律する。実体上の債権消滅が代金納付という「手続の完了」に先んじる場合、競売手続の公信力が否定され、買受人は保護されないとする射程を持つ。答案上は、執行抗告等の手続的救済の成否に関わらず、実体的な権利消滅が優先される場面で引用すべき判例である。
事件番号: 昭和50(オ)807 / 裁判年月日: 昭和51年2月17日 / 結論: 棄却
不動産の強制競売において競落許可決定が確定して競落人がその代金を全額支払い、右競落不動産の所有権を取得したときは、その後、執行債権が消滅したことを理由に強制競売手続開始決定が取り消され、競売申立が却下されても、競落の効果に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和41(オ)352 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
競売法による競売手続において、その手続の完了前に競売の基本である抵当権が消滅した場合には、右消滅による抵当権抹消登記手続を経由すると否とを問わず、競落人は目的不動産の所有権を取得できない(昭和三七年(オ)第一一二号同年八月二八日第三小法廷判決、民集一六巻八号一七九九頁参照)。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…