競売法による競売手続において、競落許可決定が確定しても、競売手続の完了(競落代金の支払)前に債務が消滅した場合には、競落人は代金支払により所有権を取得しえないと解するのが相当である。
競落許可決定確定後における抵当債権の消滅と競落人の所有権取得
競売法2条,競売法33条
判旨
競落許可決定が確定した後であっても、競落代金の支払により競売手続が完了する前に債務が消滅した場合には、競落人は代金を支払っても目的物の所有権を取得できない。
問題の所在(論点)
競落許可決定確定後、かつ代金支払による競売手続完了前に債務が消滅した場合、買受人は代金支払によって目的物の所有権を取得できるか。また、債務者が不服申立手段を講じたか否かがその結論に影響するか。
規範
競売手続における買受人の所有権取得は、競落代金の支払(手続の完了)を要件とする。したがって、代金支払前に被担保債権の弁済等により債務が消滅したときは、競売手続の基礎となる実体上の権利関係が失われるため、その後になされた代金支払による所有権移転の効力は認められない。
重要事実
本件では、不動産の競売手続において競落許可決定がなされ、それが確定した。しかし、買受人(上告人)が競落代金を支払って競売手続が完了するよりも前の段階で、当該競売の基礎となっていた債務が消滅した。債務者はこの債務消滅について異議抗告等の不服申立てを行っていたか否かは不明であるが、買受人はその後代金を支払い、所有権の取得を主張した。
あてはめ
本件において、債務は競落代金の支払前に消滅している。競売は債務の強制的な実現手続であるから、代金支払という手続完了の時点において債務が存在することが、有効な所有権移転の前提となる。本件では、代金支払前に債務が消滅している以上、競落許可決定が確定していたとしても、その後に強行された代金支払によって所有権を取得することはできない。この理は、債務者が執行手続内で異議抗告等の不服手段を講じたか否かによって左右されるものではない。
結論
債務消滅後に代金を支払った競落人は、当該物件の所有権を取得できない。
実務上の射程
民事執行法下の実務においても、代金納付前に債務が消滅し、執行停止書面が提出されれば売却許可決定の取消等(民執法71条、183条等参照)がなされるが、本判決は、手続が停止されずに代金納付に至った場合でも、実体法上の債務消滅が先行していれば所有権移転の効力が生じないことを示す実体法上の準拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)958 / 裁判年月日: 昭和38年3月14日 / 結論: 棄却
建物に対し根抵当権が設定かつ登記された後になされ賃貸期間を少くとも一〇年とする当該建物の賃貸借は、右建物の競落人に対抗できない。