原告の当事者表示を「D組合」とすべきところを誤つて「D組合北海道支部」とした事件において第一審における右表示の訂正が許された事例。
判旨
当事者の表示を誤った場合において、本来の当事者と誤記された表示との間に同一性が認められ、かつ相手方に不測の損害を与えるおそれがないときは、当事者の表示の訂正が許される。
問題の所在(論点)
訴状における当事者の表示が、本来の権利能力者(法人)ではなくその支部名で記載されていた場合、これを当事者の表示の訂正によって是正できるか。法人の表示を誤って支部の名称とした場合の適法性が問題となる。
規範
訴状に記載された当事者の表示に誤りがある場合であっても、それが単なる表示の誤りであって、実質的な当事者の同一性を害さないときは、当事者の表示を訂正することが認められる。特に、本来の権利能力者である法人の名称をその内部組織(支部等)の名称として誤記したにすぎない場合、相手方がその誤りに同意しているなどの事情があれば、表示の訂正は適法である。
重要事実
被上告人(原告)は、本訴提起にあたり、当事者の表示を「D組合」とすべきところを、誤ってその内部組織である「D組合北海道支部」として提訴した。第一審の口頭弁論期日において、被上告人がこの表示の誤りを訂正する旨を申し立てたところ、上告人(被告)はこれに対して異議がない旨を述べた。その後、第一審裁判所は表示の訂正を許容した。
あてはめ
本件では、被上告人が本来「D組合」という法人を当事者とすべきところを「D組合北海道支部」と記載したが、これは当事者の同一性を失わせるほどの実質的な誤りとはいえない。また、第一審において被上告人が表示の訂正を申し立てた際、上告人はこれに異議がない旨を述べており、手続保障上の問題も生じていない。したがって、このような事情の下では、本来の当事者への表示の訂正を許した裁判所の措置に違法はないと解される。
結論
当事者の表示の訂正を許した第一審の判断は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
当事者の表示の訂正(民事訴訟規則15条等に関連)が認められる限界を示す。法人の一部門や支部を誤って当事者とした場合に、法人本体へ表示を切り替える際の指針となる。実務上は、当事者が実質的に特定されており、かつ相手方の防御に支障がない場合に広く認められる傾向にある。
事件番号: 昭和38(オ)45 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
商業登記簿上の名称が「D(平仮名)林業株式会社」である会社が営業上「D林業株式会社」の名称を用いるのを常とし、手形取引においてもその名称を用いていた場合、右名称を用いて振り出した手形は右会社振出の手形として有効である。