訴訟代理委任状に事件番号の書損があり、且つ委任者たる会社代表者某の右代表者たることの表示が委任状の上に缺如している場合に、当該委任状の記載並びに記録に照し右委任状による訴訟代理委任を有効とした事例。
判旨
委任状に事件番号の誤記や代表者資格の表示欠落があっても、委任状の記載及び記録全体から合理的に判断して訴訟委任の趣旨が認められるならば、当該訴訟委任は有効である。
問題の所在(論点)
訴訟委任状における事件番号の誤記および代表者の資格表示の欠落が、民事訴訟法上の訴訟委任(同法54条等)の有効性に影響を及ぼすか。
規範
訴訟委任状の有効性は、書面上の形式的な記載のみに拘泥せず、委任状の文言と訴訟記録全体を総合して、委任者が特定の訴訟事件について訴訟委任をなす趣旨であるか否かによって判断すべきである。誤記や資格表示の欠如があっても、その趣旨が客観的に顕著であれば、直ちに無効とはならない。
重要事実
本件訴訟の委任状において、控訴事件番号が「昭和35年(ネ)第38号」と記載されていたが、正しくは「第382号」であった。また、作成名義が「B製氷有限会社D」と記されており、Dが同社の代表者である旨の資格が明示されていなかった。そのため、弁護士Eに対する訴訟委任の効力が争われた。
あてはめ
事件番号については、委任状の他の記載と記録全体を照らし合わせれば、単なる書き損じであることが顕著であり、本件控訴事件を示す趣旨と解するのが相当である。また、代表資格の欠如についても、記録上Dが代表者であることに疑いはなく、委任状の記載自体から、代表者としての資格で訴訟委任を行う趣旨を読み取ることが可能である。したがって、これら形式的不備は訴訟委任の効力を否定する理由にはならない。
結論
本件訴訟委任は有効であり、これに基づく訴訟手続に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
訴訟代理権の存否という訴訟要件の具備について、形式的な瑕疵があっても実質的に委任の合致が認められる場合には有効性を維持する柔軟な判断枠組みを示すものである。答案上は、代理権の欠缺が問題となる場面で、記載ミスを救済する法理として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)871 / 裁判年月日: 昭和31年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟委任状の真正な成立が認められる場合、それに基づく弁護士の訴訟行為は有効であり、訴訟代理権の欠缺を理由とする上告理由は認められない。 第1 事案の概要:上告会社は、第一審および控訴審における訴訟代理人(関口弁護士)に代理権がなかったと主張して上告した。記録上、上告会社の代表取締役D名義の訴訟委任…