判旨
口頭弁論において証拠が提出された場合であっても、当事者がその結果について援用・演述を行わない限り、裁判所はこれを事実認定の資料とすることはできない。
問題の所在(論点)
口頭弁論に顕出された証拠(鑑定書)について、当事者が何ら演述を行わなかった場合に、裁判所がこれを判決の基礎となる証拠資料として採用しなかったことは適法か。
規範
民事訴訟法における口頭弁論原則に基づき、証拠資料を裁判の基礎とするためには、単に証拠が提出(顕出)されるだけでなく、当事者によって当該証拠の内容や結果について口頭弁論の場において演述され、証拠調べの結果が弁論の内容として取り込まれることを要する。
重要事実
当事者が原審において鑑定書を提出し、それが口頭弁論の場に顕出されていた。しかし、記録によれば、当事者双方はその鑑定書の内容や結果について、口頭弁論において何ら演述を行わなかった。その後、原審は造作の価格を判断するにあたり、当該鑑定書を証拠資料として採用せずに判断を下した。
あてはめ
本件では、鑑定書が形式的に口頭弁論の場に顕出されていた事実は認められる。しかし、記録によれば当事者双方がこれについて一切の演述を行っていない。口頭弁論原則の下では、弁論で主張・演述されない資料を裁判所が一方的に認定に用いることは、当事者の手続的保障を欠く。したがって、演述のない鑑定書を価格判断の資料としなかった原審の判断に、証拠法則上の違法はないと解される。
結論
当事者の演述がない以上、裁判所が当該証拠を事実認定の資料としなかったことは適法である。
実務上の射程
証拠調べの結果を判決の基礎とするための「援用」や「演述」の必要性を説く。実務上、鑑定結果や証人尋問の結果など、提出された証拠をいかに弁論の内容として取り込むべきかという口頭弁論原則の基本を示す。
事件番号: 昭和36(オ)657 / 裁判年月日: 昭和36年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の証拠を採用しない場合において、判決理由の中でその不採用の理由を具体的に示さなければならない法的義務はない。また、証拠の信用性に関する評価や判断は事実審裁判所の専権に属する事項である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において乙第6号証および証人Dの証言を提出したが、原審はこれらを「主…