契約解除の成否に事情変更の法理を適用しなかつたことが違法でないとされた事例。
判旨
相手方の本人尋問における供述内容を自己に有利なものとして援用したとしても、それにより直ちに裁判上の自白が成立するものではない。
問題の所在(論点)
相手方の本人尋問における供述内容を当事者が援用した場合、民事訴訟法上の「裁判上の自白」が成立し、裁判所および当事者を拘束するか。
規範
裁判上の自白が成立するためには、当事者が相手方の主張する自己に不利益な事実を認める旨の意思表示をすることを要する。相手方の本人尋問における供述内容は、あくまで証拠資料の一種にすぎず、これを援用する行為は証拠の価値を肯定する趣旨にとどまるため、弁論主義における事実の主張(自白)とは本質的に異なる。
重要事実
上告人と被上告人の間の建物等に関する紛争において、被上告人が所有権移転登記義務につき先給付の約定があった旨を本人尋問において供述した。上告人は、この供述内容を自己に有利な事実として援用し、裁判上の自白が成立したと主張して、原審の事実認定を争った。
あてはめ
被上告人の本人尋問における供述は、証拠調べの手続きにおいて顕出された証拠資料である。上告人がこの供述内容を援用したとしても、それは証拠の証明力を強調する証拠評価の主張にすぎない。また、原審は当該供述を「先給付の合意成立」という趣旨には解しておらず、証拠の取捨選択および事実認定は裁判所の専権に属する事由である。したがって、自白の成立を前提とする上告人の主張は採用できない。
結論
相手方の本人尋問における供述を援用しても裁判上の自白は成立せず、裁判所はその供述に拘束されることなく事実を認定できる。
実務上の射程
証拠調べの結果得られた供述が自己に有利であっても、それを「援用」するだけでは自白としての拘束力は生じない。実務上、相手方の供述を根拠に事実を確定させたい場合は、準備書面等で当該事実を自らの主張として明示的に援用し、相手方の先行する主張との一致を確認する必要があるが、尋問段階の供述については自由心証の対象にとどまることに留意すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)111 / 裁判年月日: 昭和34年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所に対する自白(裁判上の自白)が成立した場合、その撤回は原則として許されず、撤回を認めるべき特段の事情がない限り、裁判所は自白された事実を基礎として裁判しなければならない。 第1 事案の概要:被上告人が、昭和29年1月に上告人(家屋所有者および敷地所有者の代理人)との間で家屋および敷地を代金3…