書証の成立の認否について判決に摘示がなくても証拠を挙げてその成立の真正を判示しているところから、相手方において成立を争う趣旨を摘示したものと解せられ、民訴法第一九一条の違背はないというべきである。
書証の成立の認否について判決に摘示がなくても、民訴法第一九一条の違背がないとされた事例。
民訴法191条
判旨
婚姻の届出が受理される前に、当事者の一方が戸籍移転保留の申出を行い、かつ婚姻断念の意思を相手方の家族に伝達して相手方がこれを了知した場合には、婚姻意思の撤回が認められ、その後の届出による婚姻は無効となる。
問題の所在(論点)
婚姻届が受理される前に、一方が受理保留の申出や婚姻断念の通告を行った場合、有効な婚姻意思の撤回があったといえるか(民法739条、742条1号)。
規範
婚姻の成立には、届出時において当事者双方に真に婚姻する意思(婚姻意思)があることが必要である。婚姻届が作成・提出されたとしても、受理されるまでの間に一方が婚姻意思を撤回した場合には、もはや婚姻意思の合致が存在しないため、当該婚姻は無効となる。意思の撤回の方法は必ずしも届出の取下げに限定されず、受理を阻止する具体的行動や、相手方への意思伝達により認められ得る。
重要事実
被上告人(妻となる予定だった者)は、上告人(夫となる予定だった者)に預けていた婚姻届による届出を阻止するため、本籍地の町長に対し「事情があるため、戸籍移動の申請があっても受理を保留されたい」旨の書面(戸籍移転保留届)を送付し、町役場に到達した。その後、被上告人の実兄が被上告人と相談の上、上告人の実家に電話し、上告人の母に対し、被上告人が婚姻継続を断念した旨を通告した。上告人はこの通告の内容を了知していた。しかし、上告人はその後に婚姻届を提出し、受理された。
事件番号: 昭和32(オ)508 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。
あてはめ
被上告人が町長に対し、自己の戸籍移動を保留するよう求める書面を提出したことは、先行して作成された婚姻届による受理を拒絶する明確な意思表示であると評価できる。また、被上告人の兄を通じてではあるが、婚姻継続を断念した旨が上告人の母に伝えられ、これを上告人自身が了知した事実は、婚姻意思の喪失が相手方にも伝達されたことを意味する。これらの事実を総合すると、婚姻届が受理される以前に、被上告人の婚姻意思は適法に撤回されていたといえる。したがって、届出受理時において被上告人に婚姻意思は存在しなかったと解される。
結論
婚姻届の受理前に婚姻意思の撤回があったと認められるため、当該婚姻は無効である。
実務上の射程
婚姻意思は受理時に存在する必要があるという原則(受理時説)を確認した判例である。答案上では、勝手に届出が出されそうな状況での「不受理申出」(戸籍法27条の2)制度の背景となる理屈として引用できるほか、届出後に翻意した場合でも、受理前であれば特段の方式によらずとも意思の撤回が可能であることを示す際に有用である。
事件番号: 昭和41(オ)1317 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 破棄差戻
事実上の夫婦共同生活関係にある者が、婚姻意思を有し、その意思に基づいて婚姻の届書を作成したときは、届書の受理された当時意識を失つていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届書の受理により婚姻は有効に成立する。