債権者が債務者所有の不動産に対し仮差押執行をした後、債務者が右不動産の所有権を第三者に譲渡し、その登記を経由した場合において、右仮差押に基づく本差押がなされたときでも、右仮差押の効力の利益をうける者は依然仮差押債権者のみであつて、その利益は、配当要求をした他の債権者および交付要求をした租税債権者におよぶものではない。
仮差押された不動産に対し本差押がなされるまでの間に右不動産の所有権が移転した場合と配当要求の効力。
民訴法646条,民訴法698条,民訴法737条
判旨
不動産の仮差押え後に所有権が第三者に移転し、その後に仮差押債権者が本執行を申し立てた場合、仮差押債務者に対する他の債権者は配当要求をすることができない。仮差押えによる処分禁止の効力は相対的なものであり、仮差押債権者との関係でのみ譲渡が無効となる結果、仮差押債権者が独占的に満足を受けることとなる。
問題の所在(論点)
不動産の仮差押え後に所有権が第三者に移転した場合、その後に開始された強制執行手続において、旧所有者(仮差押債務者)の他の債権者が配当要求をすることができるか。
規範
仮差押えは債権者の執行保全を目的とするものであり、その処分制限の効力は、仮差押債権者の保全目的を達するに必要な限度で認められる相対的なものである。したがって、仮差押え後の債務者による処分は、仮差押債権者に対する関係においてのみ無効(相対的無効)となるにとどまり、他の債権者はその効力の利益を享受できない。また、この結果として仮差押債権者が独占的に弁済を受けることとなっても、それは処分という事実を契機とするものであり、平等主義の原則には反しない。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者D所有の不動産を仮差押えした。その後、Dは当該不動産を第三者Eに譲渡し、所有権移転登記を完了した。被上告人はDに対する債務名義に基づき、当該不動産について本執行(強制競売)を申し立てた。これに対し、Dに対する租税債権を有する国(上告人)が、競売代金について配当要求(交付要求)を行った。
あてはめ
本件不動産は仮差押え後にDからEへ譲渡されており、処分禁止の相対的効力により、被上告人との関係でのみDの財産として扱われる。一方で、他の債権者である上告人との関係では、譲渡は有効であり、不動産は既にEの財産となっている。したがって、上告人はDに対する債権に基づき、Eの財産となった不動産の換価代金から配当を受けることはできない。租税債権であっても、担保権付財産の譲渡に関する特則(国税徴収法22条等)に該当しない限り、一般債権と同様に解すべきである。
結論
仮差押え後の所有権移転により、旧債務者に対する他の債権者は配当要求をすることができず、仮差押債権者が事実上独占的な配当を受ける結果となる。
実務上の射程
仮差押えがなされた物件の所有権が転売された場合に、仮差押債権者が「個別相対効」によって受ける反射的利益(独占的回収)を認めた重要判例である。答案上は、仮差押えの処分禁止効の範囲と、民事執行法上の平等主義との調整を論ずる際に活用する。
事件番号: 昭和32(オ)674 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
一 仮差押登記後に設定登記された抵当権であつても、仮差押が債権の一部の執行保全のためになされたものにすぎないときは、被保全債権額を超える債権の部分に対しては、優先的効力を対抗できるものと解すべきである。 二 配当表を変更しても自己に対する配当を受けることができない場合であるときは、配当表に対する異議の申立をする利益はな…