民訴法第六三四条の「優先権ヲ主張スル権利」を目的とする訴訟は、配当異議の訴を変更する方法によつて提起することができる。
一 請求の基礎に変更がないとされた事例 二 民訴法第六三四条の「優先権ヲ主張スル権利」を目的とする訴訟は、配当異議の訴を変更する方法によつて提起できるか
民訴法232条,民訴法634条
判旨
配当異議の訴えから不当利得返還請求の訴えへの変更は、係争配当部分の利益帰属の争いを基礎とし、虚偽表示の主張という攻撃方法を共通にする限り、請求の基礎に変更がないとして許容される。
問題の所在(論点)
配当異議の訴えから不当利得返還請求の訴えへの変更につき、民事訴訟法143条1項の「請求の基礎に変更がない」といえるか。
規範
訴えの変更(民事訴訟法143条1項)が許されるための「請求の基礎に変更がない」とは、旧請求と新請求とで、その主要な紛争の解決につき共通の基礎をなす事実関係(利益帰属の争い等)が共通していることをいう。この判断においては、両請求の目的とする経済的利益が共通しており、かつ主要な攻撃防御方法が共通しているか否かを考慮すべきである。
重要事実
上告人ら(原告)と訴外Dとの間の消費貸借契約および抵当権設定契約に基づき配当がなされようとした際、被上告人(被告)はこれが通謀虚偽表示であるとして配当異議を申し立てた。当初、被告は配当額の確定を求める配当異議の訴え(旧訴)を提起していたが、手続上配当が実施されたため、上告人らが受けた配当額を不当利得として返還を求める訴え(新訴)へと変更した。上告人らは、請求の基礎が異なるとしてこの変更を争った。
あてはめ
本件の新旧両訴は、いずれも「係争配当部分の利益帰属の争い」という同一の紛争を基礎としている。また、攻撃方法においても「上告人らの消費貸借契約等が通謀虚偽表示である」という主張を共通にしている。旧訴は配当実施の阻止を目的とし、新訴は配当実施後の利益返還を目的とするにすぎず、実質的な紛争の目的は同一である。したがって、両請求の基礎は同一であると解される。
結論
本件の訴えの変更は「請求の基礎に変更がない」場合に該当し、適法である。配当手続に関する民事訴訟の規定上も、これを禁止すべき理由はない。
実務上の射程
訴えの変更の可否を論じる際の「請求の基礎」の解釈指針として重要である。特に、執行手続の進行(配当の実施)等により訴訟形態を変更せざるを得ない場合に、実質的な紛争の同一性を重視して柔軟に変更を認める基準として機能する。答案では、攻撃防御方法の共通性や経済的利益の同一性から「請求の基礎」を認定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和39年9月29日 / 結論: 棄却
債権者が債務者所有の不動産に対し仮差押執行後、債務者が右不動産の所有権を第三者に譲渡し、その登記を経由した場合には、右仮差押がそのまま本差押となつたときでも、その効力の利益をうける者は依然仮差押債権者のみにとどまり、その利益は、一般私債権者たると租税債権者たるとを問わず、配当要求をなした債権者におよぶものではない。