判旨
証拠調べに要する費用の予納がないことを理由に証拠決定を取り消すことは適法であり、当該証拠が唯一の証拠でない限り、証拠不取調の違法は生じない。
問題の所在(論点)
1. 証拠調べ費用の未納を理由とする証拠決定の取消しが適法か。2. 当該証拠を取り調べずに結審したことが、証拠不取調の違法(審理不尽)に該当するか。
規範
裁判所は、当事者が証拠調べに要する費用を予納しないときは、証拠決定を取り消すことができる。また、当事者が申し出た証拠が、特定の主要事実を直接証明するための唯一の証拠(唯一の証拠方法)にあたらない場合には、裁判所がその申出を排斥して結審したとしても、審理不尽の違法を構成しない。
重要事実
上告人(被告・控訴人)は、弁済の抗弁を立証するため、原審において証人Dおよび控訴人本人の尋問を申請し、一旦は採用された。しかし、呼出に要する郵券が未納であったため、原審は第四回口頭弁論期日において証拠決定を取り消し、そのまま弁論を終結した。なお、弁済の事実に係る立証については、第一審において別の証人Eの取調が行われていた。
あてはめ
まず、証拠決定の取消しについて、記録上明らかに呼出に要する郵券の未納が認められるため、費用の予納がないことを理由とする取消手続に違法はない。次に、本件証拠の必要性について、弁済の事実に係る立証は既に第一審において証人Eの取調がなされている。したがって、取り消された証人Dらの尋問は「唯一の証拠」とはいえず、これを排斥して結審したとしても適法である。
結論
原審の証拠決定取消および結審の手続に違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における職権証拠調べの例外(唯一の証拠の原則)と予納義務の関係を整理する際に用いる。実務上、郵券等の費用予納は手続進行の前提であり、これを怠った場合のサンクションとして証拠決定取消が認められることを示す判例である。答案上は、釈明権の行使や証拠採用の裁量を論じる文脈で、必要性の有無(唯一の証拠か否か)を判断基準として引用する。
事件番号: 昭和28(オ)536 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べの申し出において立証事項や証拠方法の表示が不十分な場合は不適法であり、それが唯一の証拠であっても裁判所は証拠調べを行う義務を負わない。 第1 事案の概要:上告人は原審においてある証拠の申し出を行ったが、その際、当該証拠によって何を立証しようとするのかという「立証事項」の明示、および対象とな…