判旨
行政処分の適否は処分当時の状況に従って判断されるべきであり、自作農創設特別法に基づく買収処分について、処分庁の認定に重大かつ明白な瑕疵が認められない限り、当該処分は適法である。
問題の所在(論点)
行政処分の適否を判断する基準時(処分時か否か)、および自作農創設特別法30条に基づく買収処分における事実認定の瑕疵が、処分を無効とするほどの重大かつ明白なものといえるか。
規範
行政処分の取消事由または無効事由の存否、すなわち処分の適否は、当該処分が行われた当時の客観的状況および事実状態を基準として判断すべきである。また、公定力を有する行政処分が当然無効となるためには、その内容または手続において認定に重大かつ明白な瑕疵が存在することを要する。
重要事実
本件土地は、近隣に開発・造成されるべき農地の利用上必要な薪炭採草用地として、自作農創設特別法30条1項7号に基づき国によって買収された。上告人は、同法5条5号等の規定を根拠に、農地として買収できない土地を同法30条1項7号で買収することは許されないと主張して、買収処分の瑕疵を争った。
あてはめ
本件買収処分の適否を検討するに、処分当時の状況に基づき判断すると、本件土地が附近の農地利用に資する薪炭採草用地に該当するという処分庁の認定は、当時の実態に即したものといえる。上告人が主張する同法5条5号の適用除外規定は、同法30条に基づく買収には直接適用されない。したがって、処分庁が同条項の要件に該当すると判断したことに、社会通念上、重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
結論
本件買収処分に重大かつ明白な瑕疵はなく、処分当時の状況に照らして適法と認められる。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…
行政処分の違法性判断の基準時が「処分時」であることを簡潔に示した判例であり、行政訴訟において事後的な事情変更が処分の適否に影響しないことを論証する際に活用できる。また、無効判断における「重大明白説」の具体的な適用例としても位置づけられる。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和35(オ)47 / 裁判年月日: 昭和36年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分における書面の「交付」は、処分庁の一方的行為であり、相手方の受領の意思や受領証の提出を要せず、事実上相手方の了知し得る状態におくことで足りる。また、村外居住者の土地を優先的に買収しても、それが実情に即した合理的な理由に基づくものであれば、不公平な差別には当たらず憲法29条等に違反しない。 …
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。