判旨
代理権限の有無は客観的な委任関係に基づき判断されるべきであり、本人が代理権を与えた旨の表示がない場合や、基本代理権が存在しない場合には、表見代理の成立を認める余地はない。
問題の所在(論点)
1. 管理委任や交渉の事実から、代理権の存在を推認できるか。2. 本件において、民法109条または110条の表見代理が成立する余地があるか。
規範
1. 代理権の有無は、本人が代理人に対し特定の法律行為を行う権限を付与したか否かによって決せられる。2. 民法109条の表見代理が成立するためには、本人が第三者に対して代理権を与えた旨を表示した事実が必要である。3. 同法110条の表見代理が成立するためには、代理人が基本代理権を有しており、かつその権限を越えて行為したことが必要である。
重要事実
上告人(原告)は、Dが被上告人(被告)Bを代理して本件山林に関する行為を行ったと主張した。具体的には、Dが山林管理をEに委任し、代替地の交渉を単独で行い、EがDの依頼により納税等を行っていた事実が挙げられた。しかし、原審はDにBを代理する権限はなかったと判断したため、上告人は表見代理の成立をも予備的に主張して上告した。
あてはめ
1. Dが山林管理を委任した事実や代替地交渉を一人で行った事実は、代理権限がない者が行ったに過ぎない可能性を否定できず、直ちに代理権の存在を基礎付けるものではない。2. 被上告人BがDに対して代理権を与えた旨を表示した事実は認められないため、109条の適用はない。3. Dがそもそも何らかの基本代理権を持っていた事実も認められず、権限外の行為という構成も不可能なため、110条の適用もない。
結論
Dに代理権はなく、また表見代理の成立要件も満たさないため、Bに対して効果帰属は認められない(上告棄却)。
事件番号: 昭和35(オ)47 / 裁判年月日: 昭和36年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分における書面の「交付」は、処分庁の一方的行為であり、相手方の受領の意思や受領証の提出を要せず、事実上相手方の了知し得る状態におくことで足りる。また、村外居住者の土地を優先的に買収しても、それが実情に即した合理的な理由に基づくものであれば、不公平な差別には当たらず憲法29条等に違反しない。 …
実務上の射程
表見代理の各条項(109条、110条)の適用にあたっては、その前提となる「表示」や「基本代理権」といった具体的要件の存否を厳格に認定すべきであることを示している。答案作成上は、単に代理人らしい振る舞いがあるというだけでは足りず、条文上の各要件に対応する事実を個別に摘示する必要があることを再確認させる事例である。
事件番号: 昭和35(オ)726 / 裁判年月日: 昭和36年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の適否は処分当時の状況に従って判断されるべきであり、自作農創設特別法に基づく買収処分について、処分庁の認定に重大かつ明白な瑕疵が認められない限り、当該処分は適法である。 第1 事案の概要:本件土地は、近隣に開発・造成されるべき農地の利用上必要な薪炭採草用地として、自作農創設特別法30条1項…
事件番号: 昭和39(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和40年6月25日 / 結論: 棄却
養子縁組の成立に関し原審の確定したような諸般の事情があるときは、甲(養子たるべき者の代諾権者)が乙、丙(養親となるべき者)と養子縁組をする際、同養子縁組の成否について養母たるべき丙の意思を直接に確認しなかつたとしても、これをもつて甲に重大な過失があつたものとはいえない。
事件番号: 昭和54(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和59年11月29日 / 結論: その他
未墾地につき入植許可を受け農地法施行法一一条の規定により売渡予約書の交付を受けた者とみなされた甲が、その買受の申込をしたのち、県知事に対し、右土地の開墾に従事していたその子乙との連名で入植名義を乙に変更することの許可申請をし、これに基づいて乙への入植名義の変更が許可された場合に、それが老齢、病気等を理由とする申請につい…
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…