未墾地につき入植許可を受け農地法施行法一一条の規定により売渡予約書の交付を受けた者とみなされた甲が、その買受の申込をしたのち、県知事に対し、右土地の開墾に従事していたその子乙との連名で入植名義を乙に変更することの許可申請をし、これに基づいて乙への入植名義の変更が許可された場合に、それが老齢、病気等を理由とする申請について従来行われていた県の行政上の取扱いに従つたものである等判示の事実関係があるとしても、右許可行為は法律の規定に根拠をもたない事実上の措置にすぎず、その後に右買受申込に基づいて甲に対してされた売渡処分は、適法である。
未墾地につき入植許可を受けた甲からその子乙への入植名義の変更が許可されたのちに甲に対してされた売渡処分が適法とされた事例
自作農創設特別措置法41条,自作農創設特別措置法41条の2,農地法施行法11条,農地法61条,農地法63条,農地法64条,農地法67条
判旨
法律が行政処分等の要件、手続、形式を具体的に定めている場合、同様の効果をそれ以外の方法で生じさせることは原則として認められず、法律に根拠のない「入植名義変更許可」は売渡予約上の権利を移転させる法的効力を有しない。
問題の所在(論点)
法律に直接の根拠規定がない「入植名義変更許可」という行政上の取扱いが、農地法上の売渡予約上の権利を承継・付与させる行政処分としての法的効力を有するか。また、これに反する売渡処分が無効となるか。
規範
一定の法律効果の発生を目的とする行政庁の行為につき、法律がその要件、手続及び形式を具体的に定めている場合には、法律の定める手続・形式以外の方法によって同様の効果を生じさせることは原則として認められない。したがって、法律に明文の根拠がない事実上の行政上の取扱いにすぎない措置については、法律上の権利の承継や付与といった法的効果を認めることはできない。
重要事実
事件番号: 昭和31(オ)845 / 裁判年月日: 昭和32年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分は真実の所有者に対して行うべきであるが、登記簿上の所有者に対し確定した買収処分は、それが登記名義人に対してなされたという一事をもって当然無効とはならない。また、自作農創設特別措置法28条にいう「自作をやめようとするとき」とは、必ずしもその旨の意思表示を要するものではない。 第1 事案…
亡Dは未墾地の入植許可を受け、開墾に従事していたが、老齢等の理由で子Bに入植名義を変更するため「入植名義変更許可願」を提出し、県農林部長がこれを許可した。しかし、並行してDを被売渡人とする手続が進行しており、知事はDに対し農地法に基づく売渡処分を行った。Bは、上記名義変更許可により自分に売渡を受ける法的地位が移転したため、Dへの売渡処分は無効であると主張して争った。
あてはめ
農地法は、売渡予約上の権利付与につき、買受予約申込書の提出(63条)、適格性の審査(64条)、使用許可(68条)等の厳格な要件・手続を明定している。本件の「入植名義変更許可」は、これら法定の手続を履践することなく事実上の便宜のために行われた措置にすぎない。かかる措置に法的効果を認めると、法が予定する審査・手続を脱法的に省略することを許すことになり、法の趣旨に反する。したがって、本件許可は権利移転の効力を有さず、正規の手続を経たDへの売渡処分を無効とする瑕疵は存在しない。
結論
本件入植名義の変更許可は法律上の根拠を欠く事実上の措置にすぎず、Dに対する売渡処分は有効である。Bの請求は認められない。
実務上の射程
法律による行政の原理に基づき、法定された手続外での行政行為に法的効力を認めることに否定的な立場を示した。行政実務上の便宜的な「名義変更」であっても、法律の根拠がない限り、実体法上の権利変動(特に強行法規性の強い農地法等)を左右する公定力や拘束力は認められないという規範として機能する。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
事件番号: 昭和38(オ)814 / 裁判年月日: 昭和40年8月31日 / 結論: その他
一旦有資格者に売り渡された農地を他の農地等との交換の目的を実現させるため重ねて第三者に売り渡すがごときことはたとえそれがさきに売渡を受けた者の意思に反しない場合においても、法律上許されないものといわなければならない。
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…